症候性骨盤臓器脱患者において、保存的治療であるペッサリー療法は手術治療と比較して、24ヵ月時点での患者報告による改善に関して非劣性が認められなかった。オランダ・アムステルダム大学のLisa R. van der Vaart氏らが、オランダの21施設で実施した無作為化非劣性試験「PEOPLEプロジェクト」の結果を報告した。骨盤臓器脱は女性のQOL(生活の質)に悪影響を及ぼす疾患で、平均寿命の延長に伴い骨盤臓器脱に対する費用対効果の高い治療が世界的に求められている。JAMA誌2022年12月20日号掲載の報告。
24ヵ月時の症状の主観的改善を手術と比較
研究グループは、手術歴またはペッサリー療法歴のないステージ2以上の骨盤臓器脱症状を有する女性を、ペッサリー群または手術群に1対1の割合で無作為に割り付けた。
主要エンドポイントは、24ヵ月時の主観的改善とし、「とても良くなった」から「とても悪くなった」まで7ポイントのリッカート尺度を用いたPatient Global Impression of Improvement(PGI-I)で評価した。副次エンドポイントは、重症度(Patient Global Impression of Severity:PGI-S)、疾患特異的QOLなどで、そのほか治療群のクロスオーバーや有害事象についても評価した。
主要エンドポイントの統計解析では、PGI-I評価に基づき改善(「とても良くなった」、「良くなった」)と非改善に分け、非劣性マージンは群間リスク差の信頼区間(CI)下限が-10%であることとした。
2015年3月~2019年11月に、適格基準を評価された1,605例のうち同意が得られた440例(平均[±SD]年齢 64.7±9.29歳)が無作為化された(ペッサリー群218例、手術群222例)。最終追跡調査日は、2022年6月30日であった。
ペッサリー療法は手術に対して非劣性を認めず
無作為化された440例(平均[±SD]年齢 64.7±9.29歳)のうち、ペッサリー群173例(79.3%)および手術群162例(73.3%)が24ヵ月の追跡調査を完了した。
主観的改善は、ペッサリー群で173例中132例(76.3%)、手術群で162例中132例(81.5%)に認められた(群間リスク差:-6.1%、片側95%CI:-12.7~∞、非劣性のp=0.16)。per-protocol解析では、ペッサリー群で74例中52例(70.3%)、手術群で150例中125例(83.3%)が主観的改善を報告した(-13.1%、-23.0~∞、非劣性のp=0.69)。
24ヵ月時にペッサリー群の218例中123例(60.0%)がペッサリーの使用を中止しており、118例(54.1%)は手術へ治療を切り替えた。
主な有害事象は、ペッサリー群が不快感(42.7%)、手術群が尿路感染症(9%)であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)