早期妊娠高血圧腎症予防のアスピリンを24~28週で中止、発生率は?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2023/03/06

 

 アスピリンは、早期妊娠高血圧腎症のリスクが高い妊婦においてその発生率を抑制するが、周産期出血のリスクを上昇させる可能性があるという。スペイン・バルセロナ自治大学のManel Mendoza氏らは、可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFlt-1)と胎盤増殖因子(PlGF)の比が正常な妊婦では、妊娠36週までアスピリンの投与を継続した場合と比較して、24~28週での投与中止は、早期妊娠高血圧腎症の発生に関して非劣性であり、出血性合併症は減少することを示した。研究の成果は、JAMA誌2023年2月21日号で報告された。

スペインで行われた第III相無作為化試験

 本研究は、スペインの9施設で実施された第III相非盲検無作為化試験であり、2019年8月~2021年9月の期間に参加者の募集が行われた(Instituto de Salud Carlos IIIなどの助成を受けた)。

 対象は、年齢18歳以上、妊娠第1期(妊娠11~13週)に早期妊娠高血圧腎症のリスクが高いと判定された妊娠24~28週(24週0日~27週6日)の単胎妊娠で、妊娠16週6日までにアスピリン150mg/日の投与を開始し、sFlt-1/PlGF比≦38の妊婦であった。
 
 被験者は、アスピリンの投与を中止する群(介入群)または36週まで投与を継続する群(対照群)に無作為に割り付けられた。

 主要アウトカムは、妊娠37週未満における妊娠高血圧腎症(早期妊娠高血圧腎症)を伴う出産とされた。早期妊娠高血圧腎症の発生率の95%信頼区間(CI)の上限値が1.9%未満の場合に非劣性基準を満たすと判定された。

用量・治療期間の異なる投与法の検討が必要

 936例(平均年齢32.4[SD 5.8]歳)が登録され、473例が介入群、463例は対照群に割り付けられた。

 早期妊娠高血圧腎症は、介入群が1.48%(7/473例)、対照群は1.73%(8/463例)で発生し(絶対群間差:-0.25%、95%CI:-1.86~1.36)、介入群の対照群に対する非劣性が確認された。

 早期妊娠高血圧腎症妊婦の出産時の妊娠週数中央値は、介入群が35.1週、対照群も35.1週であった(p=0.42)。妊娠34週未満での有害アウトカムおよび37週未満での有害アウトカムの発生には、両群間に有意な差は認められなかった。

 少なくとも1回の出血性合併症の発生率は、対照群(12.7%[59/463例])に比べ介入群(8.0%[38/473例])で低かった(絶対群間差:-4.71%、95%CI:-8.61~-0.81)。新生児の有害アウトカムについては、いずれも両群間に有意な差はみられなかった。

 著者は、「アスピリンの用量および治療期間が異なる投与法の臨床的意義を検討するために、新たな研究が必要と考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 前田 裕斗( まえだ ゆうと ) 氏

東京科学大学 医歯学総合研究科 公衆衛生学分野