米国のアフリカ系の家系で、APOEε3/ε4遺伝子型を持つ集団では、APOEε3のR145Cミスセンス変異体がアルツハイマー病(AD)のリスク上昇と関連するとともに、ADの早期発症をもたらす可能性があることが、米国・スタンフォード大学のYann Le Guen氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年2月21日号に掲載された。
3つの段階で解析
研究グループは、アフリカ系の家系における2つの
APOEミスセンス変異体(R145CとR150H)がADリスクと関連するかを評価する目的で、3万1,929人を対象とする探索的な症例対照研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。
解析は3つの段階の順に行われた。第1段階の発見コホートには、症例2,888人(年齢中央値77歳[四分位範囲[IQR]:71~83]、男性31.3%)と、対照4,957人(77歳[71~83]、28.0%)が、第2段階の再現コホートには、症例1,201人(75歳[69~81]、30.8%)と、対照2,744人(80歳[75~84]、31.4%)が、第3段階の外的妥当性コホートには、症例733人(79.4歳[73.8~86.5]、97.0%)と、対照1万9,406人(71.9歳[68.4~75.8]、94.5%)が含まれた。
R150Hミスセンス変異との関連はない
発見コホートのε3/ε4層別解析では、
APOEε3のR145Cミスセンス変異体がAD群の52人(4.8%)、対照群の19人(1.5%)に認められた。R145Cは、ADリスクの上昇と関連しており(オッズ比[OR]:3.01[95%信頼区間[CI]:1.87~4.85]、p=6.0×10
−6)、AD発症年齢が若いこととも関連があった(β:-5.87歳[95%CI:-8.35~-3.4]、p=3.4×10
−6)。
R145CとADリスクとの関連は、第2段階のコホート(R145C発現:AD群23人[4.7%]、対照群21人[2.7%]、OR:2.20[95%CI:1.04~4.65]、p=0.04)で再現され、第3段階の外的妥当性コホート(R145C発現:11人[3.8%]、149人[2.7%]、1.90[0.99~3.64]、p=0.051)でもほぼ一致していた。
また、発見コホートで認められたR145CとAD発症の若年化との関連は、第2段階のコホート(β:-5.23歳[95%CI:-9.58~-0.87]、p=0.02)で再現され、第3段階の外的妥当性コホート(β:-10.15歳[-15.66~-4.64]、p=4.0×10
−4)でも確認された。
R145Cについては、
APOEの他の遺伝子型では有意な関連はみられず、R150Hは
APOEのすべての遺伝子型で有意な関連はなかった。
著者は、「付加的な外的妥当性の検証を行うことで、これらの知見はアフリカ系の人々におけるADの遺伝的リスクの評価において有用な情報をもたらす可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)