アルツハイマー病(AD)の症状に対する治療には、ドネペジルが用いられることが多いが、早期の治療中断も少なくない。ドネペジル治療開始後の抗認知症薬使用の継続率を明らかにすることは、今後の治療戦略の開発および改善に役立つ可能性があるものの、これらに関する日本からのエビデンスはほとんどなかった。九州大学の福田 治久氏らは、日本人AD患者におけるドネペジル開始後の抗認知症薬の継続率を明らかにするため、保険請求データベースを用いて検討を行った。その結果、日本人AD患者における抗認知症薬の継続率は、他国と同様に低いことが明らかとなった。著者らは、長期介護が必要な患者で治療中断リスクが高く、AD患者の薬物治療継続率を改善するためには、さらなる対策が求められると報告している。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2022年10月1日号の報告。
17の自治体より2014年4月~2021年10月にドネペジルを新規で処方されたAD患者に関する保険請求データを収集した。抗認知症薬の継続性は、ドネペジル最終処方後60日以内にドネペジル、他のコリンエステラーゼ阻害薬、メマンチンを処方された場合と定義した。要介護レベルと治療中断との関連を分析するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・対象は、AD患者2万474例(平均年齢:82.2±6.3歳、女性の割合:65.7%)。
・抗認知症薬の継続率は、開始後30日で89.1%、90日で79.4%、180日で72.6%、360日で64.5%、540日で58.3%であった。
・要介護度別における治療中断のハザード比は、介助が必要な患者で1.01(95%信頼区間[CI]:0.94~1.07)、長期介護の必要性が低度の患者で1.12(95%CI:1.06~1.18)、長期介護の必要性が中程度~高度の患者で1.31(95%CI:1.21~1.40)であった。
(鷹野 敦夫)