尿路感染症が疑われる70歳以上のフレイル高齢者について、医療者に対して適切な抗菌薬使用決定ツールの提供や教育セッションなどの多面的抗菌薬管理介入を行うことで、合併症や入院の発生率などを上げずに、安全に抗菌薬投与を低減できることが示された。オランダ・アムステルダム自由大学のEsther A. R. Hartman氏らが、ポーランドやオランダなど4ヵ国の診療所などで行ったプラグマティックなクラスター無作為化試験の結果を報告した。ガイドラインでは限定的な抗菌薬使用が推奨されているが、高齢患者においては、処方決定の複雑さや異質性のため推奨使用の実施には困難を伴うとされていた。BMJ誌2023年2月22日号掲載の報告。
38クラスターを対象に7ヵ月追跡
研究グループは2019年9月~2021年6月にかけて、ポーランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの一般診療所(43ヵ所)と高齢者ケア組織(43ヵ所)のうち、1ヵ所以上を含む38クラスターを対象に、ベースライン期間5ヵ月、追跡期間7ヵ月のプラグマティックなクラスター無作為化試験を行った。
被験者は70歳以上のフレイル高齢者1,041例(ポーランド325例、オランダ233例、ノルウェー276例、スウェーデン207例)で、追跡期間は411人年だった。
介入群の医療者には、多面的抗菌薬管理介入として、適切な抗菌薬使用の決定ツールや教材の入ったツールボックスを提供。参加型アクションリサーチ・アプローチのほか、教育・評価セッションや、介入の地域に即した変更を行った。対照群では、医療者が通常の治療を行った。
主要アウトカムは、尿路感染症疑いのある患者への抗菌薬処方数/人年だった。副次アウトカムは、合併症率、全原因による紹介入院、全原因による入院、尿路感染症疑い後21日以内の全死因死亡、全死因死亡などだった。
尿路感染症疑いへの抗菌薬投与、介入で0.42倍に
尿路感染症が疑われた患者への抗菌薬処方数は、介入群54件/202人年(0.27/人年)、対照群121件/209人年(0.58/人年)だった。介入群の被験者は、対照群の被験者と比べて尿路感染症疑いで抗菌薬の処方を受ける割合が低く、率比は0.42(95%信頼区間[CI]:0.26~0.68)だった。
合併症率(介入群0.01未満/人年vs.対照群0.05/人年)、紹介入院率(0.01未満/人年vs.0.05/人年)、入院率(0.01/人年vs.0.05/人年)、尿路感染症疑い後21日以内の死亡(0/人年vs.0.01/人年)、全死因死亡(両群とも0.26/人年)は、両群で差はみられなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)