不全流産に対する子宮鏡手術vs.真空吸引法/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2023/04/21

 

 再びの妊娠を希望する不全流産を経験した患者への子宮鏡手術は、真空吸引法と比較し、その後の妊娠や安全性プロファイルの向上とは関連しておらず、かつ子宮鏡手術はすべての症例で実施できるとは限らないことが、フランス・パリ・シテ大学のCyrille Huchon氏らが実施した多施設共同無作為化単盲検試験「Effectiveness of Hysteroscopy in the Treatment of Intrauterine Trophoblastic Retentions:HY-PER試験」の結果で示された。真空吸引法は、不全流産患者の子宮内妊娠組織遺残物(RPOC)を除去するために一般的に用いられるが、子宮腔の瘢痕化が起こり将来の生殖能力を損なう可能性があるため、この処置に代わる方法として子宮鏡手術が普及している。著者は、「本試験は、妊娠初期の不全流産に対しては、真空吸引法が標準治療であるというエビデンスを提供しており、エビデンスレベルが低いにもかかわらず頻繁に用いられる手術手技の評価が急務であることを強調するものである」とまとめている。JAMA誌2023年4月11日号掲載の報告。

不全流産574例を子宮鏡手術と真空吸引法に無作為化、術後2年間の妊娠を比較

 研究グループは、2014年11月6日~2017年5月3日にフランスの15病院において、18~44歳で妊娠14週未満に不全流産を経験し、経膣超音波検査によりRPOCが確認され、不全流産に対する施術後早期に妊娠を希望する患者574例を、子宮鏡手術群(288例)および真空吸引群(286例)に1対1の割合で無作為に割り付け、2年間追跡調査した。

 主要アウトカムは、術後2年間における妊娠(22週を超える子宮内妊娠)。また、有害事象として、術中および術後の合併症を修正Clavien-Dindo分類で評価した。

子宮鏡手術は7%で完遂できず、手術時間および入院期間も有意に延長

 574例中、同意撤回などにより11例が除外され、intention-to-treat集団は563例であった(平均[±SD]年齢32.6±5.4歳)。真空吸引群の281例は、全例が吸引処置を完遂した。子宮鏡手術群の282例中19例(7%)は子宮鏡手術を完遂できなかった。そのうち18例は真空吸引法に変更され(完全切除不能8例、可視化不十分7例、麻酔合併症のため手術短縮を要した患者2例、機器の故障1例)、1例は子宮頸管拡張中の誤通過により失敗した。

 2年間の追跡期間において、子宮鏡手術群177例(62.8%)、真空吸引群190例(67.6%)が主要アウトカムを達成した。群間差は-4.8%(95%信頼区間[CI]:-13.0~3.0、p=0.23)であり、time-to-event解析において、主要評価項目に関して両群間で統計学的有意差は認められなかった(ハザード比:0.87、95%CI:0.71~1.07)。手術時間および入院期間は、子宮鏡手術群で有意に延長した。

 新たな流産、子宮外妊娠、Grade3以上の手術合併症(外科的、内視鏡的または放射線学的介入を要する外科的合併症、生命を脅かす合併症、死亡)、およびRPOCを除去するための再介入の割合は、両群間で差はなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)