オーストラリア・メルボルン大学のLaure F. Pittet氏らが、オーストラリア、オランダ、スペイン、英国およびブラジルで実施した医療従事者を対象とする無作為化二重盲検プラセボ対照試験「BCG Vaccination to Reduce the Impact of COVID-19 in Healthcare Workers:BRACE試験」の結果をプラセボと比較すると、BCGワクチン接種による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスク低下は認められなかった。BCGワクチンには、免疫調節のオフターゲット効果があり、COVID-19に対する保護作用があると仮定されていた。NEJM誌2023年4月27日号掲載の報告。
医療従事者を対象、BCGワクチン接種後のCOVID-19発症と重症化をプラセボと比較
研究グループは2020年5月14日~2021年4月1日に、医療従事者をBCG-Denmarkワクチン接種群またはプラセボ(生理食塩水投与)群に無作為に割り付け追跡調査した。被験者の適格基準は、SARS-CoV-2感染歴、COVID-19ワクチン接種歴、過去1年以内のBCGワクチン接種歴、過去1ヵ月以内の他の弱毒生ワクチンの接種歴がないこととした。
主要アウトカムは、無作為化後6ヵ月時までの症候性COVID-19および重症COVID-19の発生で、ベースラインでSARS-CoV-2検査が陰性の参加者(修正intention-to-treat[ITT]集団)を解析対象とした。
3,988例が無作為化された時点で、COVID-19ワクチンが利用可能となり、計画されたサンプル数に達する前に募集中止となった。追跡調査は6ヵ月、またはCOVID-19ワクチン初回接種またはCOVID-19を発症したか確認できない場合は打ち切られた。
BCGワクチン接種で6ヵ月以内のCOVID-19リスクは低下せず
無作為化された3,988例中、14.1%がベースライン時にSARS-CoV-2血清陽性であり、修正ITT集団は84.9%(BCG群1,703例、プラセボ群1,683例)であった。
無作為化後6ヵ月間に症候性COVID-19はBCG群で132例(補正後推定リスク:14.7%)、プラセボ群で106例(12.3%)発生した(群間差:2.4ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.7~5.5、p=0.13)。また、重症COVID-19は、BCG群で75例(補正後推定リスク:7.6%)、プラセボ群61例(6.5%)発生した(群間差:1.1ポイント、95%CI:-1.2~3.5、p=0.34)。
本試験で定義された重症COVID-19を満たした症例の大多数は、入院はしていなかったが、少なくとも連続3日間就労不可能であった。保守的ではない打ち切りルールを用いた補足分析および感度分析では、リスク差は類似していたが、信頼区間の幅はより狭まった。COVID-19による入院は、各群5例であった(プラセボ群で1例死亡)。
プラセボ群と比較した、BCG群のあらゆるCOVID-19エピソードのハザード比は1.23(95%CI:0.96~1.59)であった。
安全性の懸念は特定されなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)