心停止後の昏睡患者の6ヵ月死亡率、低体温療法vs.常温療法/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2021/06/25

 

 院外心停止後の昏睡状態の患者において、低体温療法は常温療法と比較して6ヵ月死亡率を低下しないことが示された。スウェーデン・ルンド大学のJosef Dankiewicz氏らが、非盲検(評価者盲検)無作為化試験「Targeted Hypothermia versus Targeted Normothermia after Out-of-Hospital Cardiac Arrest trial:TTM2試験」の結果を報告した。体温管理療法は心停止後の患者に推奨されているが、これを裏付けるエビデンスの確実性は低く、研究グループは大規模な無作為化試験で検証した。NEJM誌2021年6月17日号掲載の報告。

心停止後の昏睡状態の患者1,900例で低体温療法と常温療法の6ヵ月死亡率を比較

 研究グループは、心原性と推定されるかまたは原因不明の院外心停止後に昏睡状態の成人患者1,900例を、低体温療法群(無作為化後28時間まで目標体温33℃を維持、その後は1時間ごとに3分の1℃ずつ37℃まで復温)、または常温療法群(37.5℃以下を維持、≧37.8℃になった場合は37.5℃を目標に冷却)に無作為に割り付けた。介入期間終了後は、無作為化から72時間後まで正常体温(36.5~37.7℃)を維持した。

 主要評価項目は6ヵ月時点の全死因死亡、副次評価項目は修正Rankinスケール(mRS)で評価した6ヵ月時点での機能的アウトカムなどである。また、事前規定のサブグループは性別、年齢、初期調律、自己心拍再開までの時間、入院時のショックの有無とし、事前規定の有害事象は肺炎、敗血症、出血、血行動態の悪化を来す不整脈、体温管理装置に関連する皮膚合併症とした。

低体温療法 対 常温療法、死亡率に有意差なし

 主要評価項目の解析対象は1,850例で、6ヵ月時点の死亡は低体温療法群が925例中465例(50%)、常温療法群が925例中446例(48%)であり、常温療法に対する低体温療法の死亡リスクは1.04(95%信頼区間[CI]:0.94~1.14、p=0.37)であった。

 また、機能的アウトカムの評価を得た1,747例において、mRSスコア≧4の中等度以上の障害を有した患者は、低体温療法群が881例中488例(55%)、常温療法群が866例中479例(55%)であった(相対リスク:1.00、95%CI:0.92~1.09)。事前に規定したサブグループ解析においても、結果は一貫していた。

 血行動態の悪化を来す不整脈の発現頻度は、低体温療法群24%、常温療法群17%で、低体温療法群が有意に高かった(p<0.001)。その他の有害事象の発現率は、両群で有意差は確認されなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 香坂 俊( こうさか しゅん ) 氏

慶應義塾大学 循環器内科 准教授