十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病成人患者において、経口セマグルチド25mgおよび50mgは糖化ヘモグロビン(HbA1c)値低下および体重減少に関して、同14mgに対する優越性が確認され、安全性に関して新たな懸念は認められなかった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のVanita R. Aroda氏らが、14ヵ国177施設で実施された第IIIb相多施設共同無作為化二重盲検比較試験「PIONEER PLUS試験」の結果を報告した。セマグルチド1日1回経口投与は2型糖尿病の有効な治療法であり、セマグルチドの経口投与および皮下投与試験の曝露-反応解析では、曝露量の増加に伴いHbA1c値の低下および体重減少が大きくなることが示されていた。Lancet誌オンライン版2023年6月26日号掲載の報告。
BMI値25以上、HbA1c値8.0~10.5%の1,606例を対象
研究グループは、HbA1c値8.0~10.5%、BMI値25.0以上、メトホルミン、スルホニルウレア系薬、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬のうち1~3種類の経口血糖降下薬の安定用量を投与されている18歳以上の2型糖尿病患者を登録し、セマグルチド14mg群、25mg群または50mg群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回朝空腹時の経口投与を68週間にわたって行った。
いずれの投与群もセマグルチド3mgから投与を開始し、4週時に7mg、8週時に14mg、その後、25mg群では12週時に25mg、50mg群では12週時に25mg、16週時に50mgに漸増した。また、ベースラインで服用していた経口血糖降下薬は、DPP-4阻害薬のみ中止とし、それ以外は同一の用法・用量で継続した。
主要エンドポイントは、HbA1c値のベースラインから52週時までの変化、検証的副次エンドポイントは体重のベースラインから52週時までの変化とし、intention-to-treat集団を対象に治療指針に基づく推定使用量(試験薬の中止やレスキュー治療の有無を問わない用量)を用いて評価した。また、セマグルチドを1回以上服用した全患者を対象に安全性を評価した。
2021年1月15日~9月29日に2,294例がスクリーニングを受け、1,606例が無作為に割り付けられた(14mg群536例、25mg群535例、50mg群535例)。患者背景は、男性936例(58.3%)、女性670例(41.7%)、平均(±SD)年齢58.2±10.8歳、平均HbA1c値9.0±0.8%、平均体重96.4±21.6kgであった。
52週時のHbA1c値と体重の低下、14mg群と比較し25mg群、50mg群が有意に優れる
52週時におけるHbA1cの平均変化値(SE)は、セマグルチド14mg群-1.5%(SE 0.05)、25mg群-1.8%(0.06)、50mg群-2.0%(0.06)であった。治療指針に基づく推定使用量での評価の結果、セマグルチド14mg群に対する推定治療差(ETD)は、セマグルチド25mg群で-0.27%(95%信頼区間[CI]:-0.42~-0.12、p=0.0006)、50mg群で-0.53%(-0.68~-0.38、p<0.0001)であり、セマグルチド14mg群に対する優越性が示された。
52週時における体重の平均変化値(SE)は、セマグルチド14mg群-4.4kg(SE 0.3)、25mg群-6.7kg(0.3)、50mg群-8.0kg(0.3)であった。セマグルチド14mg群に対するETDは、セマグルチド25mg群で-2.32kg(95%CI:-3.11~-1.53、p<0.0001)、50mg群で-3.63kg(-4.42~-2.84、p<0.0001)であり、セマグルチド14mg群に対して優越性が示された。
有害事象は、セマグルチド14mg群で404例(76%)、25mg群で422例(79%)、50mg群で428例(80%)報告された。ほとんどが軽度から中等度であったが、胃腸障害が14mg群と比較して25mg群および50mg群で高率であった。死亡は10例報告されたが、治療との関連はないと判断された。
なお、著者は、用量漸増期間が最大16週と短期間であったこと、セマグルチド25mg群と50mg群の差は検証されていないこと、対象患者の大部分が白人であったことなどを研究の限界として挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)