GIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬retatrutideの有効性・安全性/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2023/07/18

 

 2型糖尿病患者の治療において、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、グルカゴンの3つの受容体の作動活性を有する新規単一ペプチドretatrutideは、プラセボと比較して、血糖コントロールについて有意かつ臨床的に意義のある改善を示すとともに、頑健な体重減少をもたらし、安全性プロファイルはGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬とほぼ同様であることが、米国・Velocity Clinical Research at Medical CityのJulio Rosenstock氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月26日号で報告された。

米国の無作為化プラセボ/実薬対照第II相試験

 本研究は、米国の42施設が参加した二重盲検無作為化ダブルダミー・プラセボ/実薬対照第II相試験であり、2021年5月~2022年6月の期間に患者のスクリーニングと無作為化が行われた(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。

 年齢18~75歳、HbA1c値7.0~10.5%(53.0~91.3mmol/mol)、BMI値25~50の2型糖尿病患者が、スクリーニング前の少なくとも3ヵ月間、食事療法と運動療法のみの治療、または安定用量のメトホルミン(≧1,000mg、1日1回)による治療を受けた後、次の8つの群(いずれも週1回皮下投与)に、2対2対2対1対1対1対1対2の割合で無作為に割り付けられた。

 (1)プラセボ、(2)デュラグルチド1.5mg、(3)retatrutide 0.5mg、(4)同4mg(開始用量2mg)、(5)同4mg(漸増せず)、(6)同8mg(開始用量2mg)、(7)同8mg(開始用量4mg)、(8)同12mg(開始用量2mg)。

 主要エンドポイントは、ベースラインから24週時点までのHbA1cの変化であり、副次エンドポイントには、36週時点までのHbA1cおよび体重の変化が含まれた。

 281例が登録され、プラセボ群に45例、デュラグルチド1.5mg群に46例、retatrutide 0.5mg群に47例、同4mg漸増群に23例、同4mg群に24例、同8mg緩徐漸増群に26例、同8mg急速漸増群に24例、同12mg漸増群に46例が割り付けられた。全体の平均年齢は56.2(SD 9.7)歳、女性が156例(56%)で、平均糖尿病罹患期間は8.1(SD 7.0)年、白人が235例(84%)であり、平均HbA1cは8.3%(SD 1.1)、平均BMI値は35.0(SD 6.3)、平均体重は98.2kg(SD 21.1)であった。

脂質プロファイルを改善し、血圧を低下させる効果も

 24週時におけるHbA1cのベースラインからの最小二乗平均変化は、プラセボ群が-0.01%(SE 0.21)、デュラグルチド1.5mg群が-1.41%(0.12)であったのに対し、retatrutide 0.5mg群は-0.43%(0.20)、4mg漸増群は-1.39%(0.14)、4mg群は-1.30%(0.22)、8mg緩徐漸増群は-1.99%(0.15)、8mg急速漸増群は-1.88%(0.21)、12mg漸増群は-2.02%(0.11)であった。

 retatrutideによるHbA1cの低下は、プラセボ群と比較して0.5mg群を除く5つの群で有意に大きく(いずれもp<0.0001)、デュラグルチド1.5mg群との比較では8mg緩徐漸増群(p=0.0019)と12mg漸増群(p=0.0002)で有意に大きかった。36週時にも、これらと一致した知見が得られた。

 また、体重は36週の時点でretatrutideの用量依存性に減少し、減少率は0.5mg群3.19%(SE 0.61)、4mg漸増群7.92%(1.28)、4mg群10.37%(1.56)、8mg緩徐漸増群16.81%(1.59)、8mg急速漸増群16.34%(1.65)、12mg漸増群16.94%(1.30)であった。プラセボ群の体重減少率は3.00%(0.86)、デュラグルチド1.5mg群は2.02%(0.72)だった。

 体重減少は、プラセボ群と比較してretatrutideの用量が4mg以上の群ではいずれも有意に大きく(4mg漸増群:p=0.0017、これ以外のすべての群:p<0.0001)、デュラグルチド1.5mg群との比較でも4mg以上の群で有意に大きかった(いずれもp<0.0001)。

 軽度~中等度の消化器系の有害事象(吐き気、下痢、嘔吐、便秘など)が、retatrutide群の35%(67/190例、0.5mg群の13%[6/47例]から8mg急速漸増群の50%[12/24例]までの範囲)、プラセボ群の13%(6/45例)、デュラグルチド1.5mg群の35%(16/46例)で発現した。試験期間中に重篤な低血糖の報告はなく、死亡例もなかった。

 著者は、「同時に、retatrutideは脂質プロファイルを改善し、血圧を低下させ、心代謝系のアウトカムを全般的に改善した」とし、「これら第II相試験の知見は、2型糖尿病および他の肥満関連合併症を有する肥満患者を対象とする第III相試験において、retatrutideの有効性と安全性をさらに検討することを支持するものである」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

専門家はこう見る

コメンテーター : 住谷 哲( すみたに さとる ) 氏

社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会泉尾病院 糖尿病・内分泌内科 主任部長

J-CLEAR評議員