ブタからヒトへ、心臓異種移植アウトカムに影響した因子/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/19

 

 2022年1月7日、米国・メリーランド大学のMuhammad M. Mohiuddin氏らは、世界初となる10個の遺伝子改変ブタ心臓のヒトへの異種移植手術を行った。既往症や複数の外科的および非外科的な合併症にもかかわらず、レシピエントは術後60日目に移植片不全で死亡するまで生命が維持された。今回、同氏らは異種移植手術のアウトカムに影響を及ぼす因子の重要性について報告を行った。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2023年6月29日号に掲載された。

同種移植不適応の末期心不全の57歳男性

 対象は、年齢57歳、歩行不能の末期心不全の男性で、静動脈体外式膜型人工肺(VA-ECMO)を装着され、同種移植が不適応の患者である。

 異種移植手術の成功後、移植片は心エコー上で良好に機能し、拡張期心不全が発現する術後47日目まで、心血管系および他の臓器系の機能は維持されていた。

 術後50日目に、心内膜心筋生検で、間質浮腫や赤血球の血管外漏出、血栓性微小血管症、補体沈着を伴う損傷した毛細血管が見つかった。

 低ガンマグロブリン血症に対する静脈内免疫グロブリン(IVIG)療法後と、初回の血漿交換中に、IgGを主とする抗ブタ異種抗体の増加が検出された。

 術後56日目の心内膜心筋生検では、進行性の心筋スティフネスと一致する線維化変性が認められた。

 また、微生物無細胞DNA(mcfDNA)検査では、ブタのサイトメガロウイルス/ロゼオロウイルス属(PCMV/PRV)の無細胞DNAの力価が上昇していた。

超急性拒絶反応は回避、ブタPCMV/PRV再活性化で有害な炎症反応

 本症例では、超急性拒絶反応は回避された。観察された血管内皮傷害の潜在的なメディエータとして、以下の因子が同定された。

 第1に、広範な血管内皮傷害は抗体介在性の拒絶反応を示すものであった。第2に、IVIGはドナーの血管内皮に強く結合しており、免疫の活性化を引き起こした可能性があると考えられた。

 最終的に、異種移植片の潜在的なPCMV/PRVの再活性化と複製が、有害な炎症反応を引き起こした可能性がある。

 著者は、「これらの知見は、将来の異種移植手術のアウトカムを改善するための方策を指し示していると考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)