solanezumab、前臨床期アルツハイマー病の進行を遅延せず/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/31

 

 前臨床期のアルツハイマー病患者において、solanezumabはプラセボと比較し、約4.5年間で認知機能低下を遅延しなかった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のReisa A. Sperling氏らが、米国、日本、カナダおよびオーストラリアの67施設で実施した無作為化比較試験「Anti-Amyloid Treatment in Asymptomatic Alzheimer's Disease:A4試験」の結果を報告した。アルツハイマー病の異なる病期において、さまざまな形態のアミロイドを標的とするモノクローナル抗体の臨床試験が行われているが、結果はまちまちである。solanezumabは、可溶性のアミロイドβ単量体を標的としていた。NEJM誌オンライン版2023年7月17日号掲載の報告。

solanezumab vs.プラセボで240週後の複合的認知機能尺度(PACC)スコアを比較

 研究グループは、65~85歳で、臨床的認知症尺度(CDR)の全般的スコアが0(スコア範囲:0[認知機能障害なし]~3[重度認知症])、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが25以上(スコア範囲:0~30、スコアが低いほど認知機能の低下を示す)、ウエクスラー記憶検査の論理的記憶の遅延再生(LMDR)スコアが6~18(スコア範囲:0~25、スコアが低いほど思い出される詳細が少ない)、および18F-florbetapir PETで脳内にアミロイドを認める前臨床期アルツハイマー病を有する人を登録し、solanezumab(最大1,600mgを4週ごとに静脈内投与)群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。

 主要エンドポイントは、複合的認知機能尺度であるPreclinical Alzheimer Cognitive Composite(PACC)スコア(4種の認知機能検査のzスコアの合計、スコアが高いほど認知機能が良好)の240週後の変化であった。

PACCスコアの変化量に有意差なし

 適格基準を満たした1,169例が、solanezumab群(578例)およびプラセボ群(591例)に無作為化された。平均年齢は72歳、女性が約60%で、75%に認知症の家族歴があった。

 240週時におけるPACCスコアのベースラインからの補正後平均変化量は、solanezumab群-1.43、プラセボ群-1.13、補正後平均群間差は-0.30(95%信頼区間[CI]:-0.82~0.22、p=0.26)であった。

 脳アミロイドPET画像では、アミロイドはsolanezumab群で平均11.6センチロイド、プラセボ群で19.3センチロイド増加した。

 浮腫を伴うアミロイド関連画像異常(ARIA)は各群とも1%未満であった。微小出血またはヘモジデリン沈着症を伴うARIAは、solanezumab群で29.2%、プラセボ群で32.8%に発現した。

(ケアネット)

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コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏

東京都健康長寿医療センター

上智大学

大正大学

J-CLEAR評議員