新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に起因する肺炎による入院患者において、アバタセプト、cenicrivirocまたはインフリキシマブはCOVID-19肺炎からの回復までの期間を短縮しなかった。米国・セントルイス・ワシントン大学のJane A. O'Halloran氏らが、米国および中南米の95病院で実施したマスタープロトコルデザインによる無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines(ACTIV)-1 Immune Modulator:ACTIV-1 IM試験」の結果を報告した。本検討は、COVID-19の予後不良の一因として免疫調節異常が示唆されていたことから実施された。JAMA誌2023年7月25日号掲載の報告。
標準治療へのアバタセプト、cenicrivirocまたはインフリキシマブ追加の有効性をプラセボと比較
研究グループは2020年10月16日~2021年12月31日に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染が確認されてから14日以内で肺病変が認められる18歳以上の入院患者を、3つのサブスタディにおいてそれぞれアバタセプト(10mg/kg、最大1,000mg、単回投与)群またはプラセボ群、cenicriviroc(300mg負荷投与後、150mgを1日2回、28日間経口投与)群またはプラセボ群、インフリキシマブ(5mg/kg、単回投与)群またはプラセボ群に無作為に割り付け、標準治療(レムデシビルおよび副腎皮質ステロイド)に追加して投与した。
主要アウトカムは、28日以内における回復までの期間で、8段階の順序尺度(スコアが高いほど健康状態が良好であることを示す)を用いて評価した。回復日は、順序尺度が6点以上となった初日と定義した。主な副次アウトカムは28日全死因死亡率などであった。
3つのサブスタディで無作為化された全患者1,971例の背景は、平均(±SD)年齢54.8±14.6歳、男性1,218例(61.8%)であった。
いずれの追加投与も、COVID-19肺炎の回復期間は短縮せず
COVID-19肺炎からの回復までの期間の中央値は、アバタセプト群vs.プラセボ群でいずれも9日(95%信頼区間[CI]:8~10)、cenicriviroc群vs.プラセボ群でどちらも8日(95%CIは8~9 vs.8~10)、インフリキシマブ群vs.プラセボ群でそれぞれ8日(95%CI:7~9)vs.9日(95%CI:8~10)であり、アバタセプト、cenicrivirocおよびインフリキシマブのいずれも、プラセボと比較して有意差は認められなかった。
28日全死因死亡率は、アバタセプト群11.0% vs.プラセボ群15.1%(オッズ比[OR]:0.62、95%CI:0.41~0.94)、cenicriviroc群13.8% vs.プラセボ群11.9%(OR:1.18、95%CI:0.72~1.94)、インフリキシマブ群10.1% vs.プラセボ群14.5%(OR:0.59、95%CI:0.39~0.90)であった。
安全性は、3つのサブスタディすべてにおいて、2次感染を含め実薬とプラセボで同等であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)