脳卒中の病院間搬送、推奨時間内に収まらず/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2023/08/25

 

 急性脳卒中の病院間搬送において、最初の病院の救急部門(ED)到着から転院搬送開始までの時間(door-in-door-out time:DIDO時間)の中央値は174分であり、現在のガイドラインで推奨されている時間(120分以内)よりも長いことを、米国・ミシガン大学のBrian Stamm氏らが、米国心臓協会(AHA)のAmerican Heart Association Get With The Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke)レジストリを用いた後ろ向きコホート研究の結果、明らかにした。一刻を争う急性脳卒中の治療は、すべての病院で実施できるわけではなく、しばしば病院間搬送を必要とする。今回の結果について著者は、「DIDO時間の延長に関連する格差や修正可能な医療システム要因は、医療の質の改善に向けた取り組みの目標として適している」と述べている。JAMA誌2023年8月15日号掲載の報告。

病院間搬送を要した急性脳卒中患者約10万9,000例について解析

 研究グループは、GWTG-Strokeレジストリにおいて2019年1月~2021年12月に、急性虚血性脳卒中または出血性脳卒中を発症し、登録関連病院のEDから他の急性期病院へ転院搬送され、かつ転院先で入院していない患者を特定し、解析した。

 主要アウトカムはDIDO時間(転院搬送開始時刻-ED到着時刻)の連続変数およびカテゴリー変数(≦120分、>120分)とし、一般化推定方程式(GEE)回帰モデルを用いて、全体およびサブグループ(出血性脳卒中、血管内治療が適応となる急性虚血性脳卒中、血管内治療以外の理由で転院搬送された急性虚血性脳卒中)における、DIDO時間と関連する患者特性および病院特性を同定した。

 解析対象は、1,925施設から転院搬送された10万8,913例(平均[±SD]年齢66.7±15.2歳、非ヒスパニック系白人71.7%、男性50.6%)で、このうち6万7,235例が急性虚血性脳卒中、4万1,678例が出血性脳卒中であった。

DIDO時間中央値は174分、ガイドライン推奨の120分を超える

 全体におけるDIDO時間の中央値は174分(四分位範囲[IQR]:116~276分)、DIDO時間が≦120分の患者は2万9,714例(27.3%)であった。

 DIDO時間中央値の延長と有意な関連がみられた因子は、80歳以上(vs.18~59歳:14.9分、95%信頼区間[CI]:12.3~17.5)、女性(vs.男性:5.2分、3.6~6.9)、非ヒスパニック系黒人(vs.非ヒスパニック系白人:8.2分、5.7~10.8)、ヒスパニック系(vs.非ヒスパニック系白人:5.4分、1.8~9.0)であった。

 一方、DIDO時間中央値の短縮と有意な関連がみられた因子は、救急医療サービスの事前通知(-20.1分、95%CI:-22.1~18.1)、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコアが12以上(vs.0~1:-66.7分、-68.7~-64.7)、血管内治療適応の急性虚血性脳卒中(vs.出血性脳卒中:-16.8分、-21.0~-12.7)であった。

 血管内治療適応の急性虚血性脳卒中患者において、女性、黒人、ヒスパニック系は、DIDO時間の有意な延長と関連があったが、救急医療サービスの事前通知、静脈内血栓溶解、NIHSSスコア高値は、DIDO時間の有意な短縮と関連していた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)