心筋症を伴うATTRアミロイドーシス、パチシランが機能的能力を維持/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2023/11/02

 

 心筋症を伴うトランスサイレチン型アミロイドーシス(ATTR心アミロイドーシス)患者において、パチシランは12ヵ月時の機能的能力を維持する。米国・コロンビア大学アービング医療センターのMathew S. Maurer氏らが21ヵ国69施設で実施中の国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「APOLLO-B試験」の結果を報告した。ATTRアミロイドーシスは、トランスサイレチンがアミロイド線維として心臓、神経、消化管、筋骨格組織に沈着することによって引き起こされる疾患で、心臓への沈着により心筋症が進行する。パチシランは、RNA干渉により肝臓におけるトランスサイレチンの産生を抑制し、遺伝性ATTRアミロイドーシス(トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー)患者における臨床試験において、ATTR心アミロイドーシスに対する有効性が示唆されていた。NEJM誌2023年10月26日号掲載の報告。

18~85歳のATTR心アミロイドーシス患者360例が対象

 研究グループは、心エコーによる拡張末期の心室中隔厚が12mmを超え心不全の既往のある18~85歳のATTR心アミロイドーシス患者を、パチシラン(0.3mg/kg、最大30mg)群またはプラセボ群に、ベースラインでのタファミジスの使用の有無、遺伝子型(変異型ATTR vs.野生型ATTR)、NYHA心機能分類クラス(IまたはII vs.III)および年齢(75歳未満vs.75歳以上)で層別化し、1対1の割合で無作為に割り付け、3週に1回12ヵ月間投与した。

 主要エンドポイントは、12ヵ月時における6分間歩行距離のベースラインからの変化量、副次エンドポイントは、(1)カンザスシティ心筋症質問票の全体サマリースコア(KCCQ-OS、スコア範囲:0~100点、点数が高いほど健康状態とQOLが良好)のベースラインから12ヵ月時までの変化、(2)12ヵ月間における全死因死亡、心血管イベントおよび6分間歩行距離の変化の複合、(3)12ヵ月間の全死因死亡、あらゆる入院、心不全による緊急受診の複合とし、階層的手順を用いて検証した。

 2019年10月~2021年5月に、計360例が登録されパチシラン群(181例)およびプラセボ群(179例)に無作為に割り付けられた。

ベースラインから1年時までの6分間歩行距離の低下はパチシラン群で有意に少ない

 12ヵ月時におけるベースラインからの6分間歩行距離の変化量は、パチシラン群-8.15m(95%信頼区間[CI]:-16.42~1.50)、プラセボ群-21.35m(-34.05~-7.52)で、群間差(Hodges-Lehmann推定差中央値)は14.69m(95%CI:0.69~28.69、p=0.02)であり、パチシラン群がプラセボ群より有意に小さかった。

 12ヵ月時のKCCQ-OSスコアは、パチシラン群ではベースラインから増加し、プラセボ群では減少した(最小二乗平均差:3.7ポイント、95%CI:0.2~7.2、p=0.04)。全死因死亡、心血管イベントおよび6分間歩行距離の変化の複合は、両群で有意差は認められなかった。

 有害事象は、パチシラン群91%(165/181例)、プラセボ群94%(168/178例)に発現した。パチシラン群での発現率が5%以上でプラセボ群より3%以上発現率が高かった有害事象は、注入に伴う反応、関節痛および筋痙縮であった。

(ケアネット)