新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染により集中治療室(ICU)で治療を受ける患者は、ICU入室期間や人工呼吸器装着期間が長いことが報告されている。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者のICU入室期間が長い理由の1つとして、サイトカインストームによる多臓器不全が挙げられている。しかし、米国・ノースウェスタン大学のCatherine A. Gao氏らが機械学習アプローチを用いて実施した研究によると、COVID-19患者におけるICU入室期間の長さは、呼吸不全を特徴とする臨床状態に起因していたことが示された。また、二次的な細菌感染による人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発生率が高く、VAPが主な死亡の原因となっていることが示唆された。本研究結果は、Journal of Clinical Investigation誌オンライン版2023年4月27日号に掲載された。
研究グループは、重症肺炎が疑われてICUに入室し、呼吸不全により人工呼吸器が装着された585例を対象とした前向きコホート研究を実施した。対象患者は、試験登録時および臨床的に肺炎が疑われるたびに気管支肺胞洗浄(BAL)により、肺炎の原因となる微生物が調べられた。ICU入室期間が異なる(COVID-19患者はICU入室期間が長い)グループ間でICU入室中のイベントを比較するという課題に対処するため、CarpeDiemという機械学習システムが用いられた。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者585例の内訳は、COVID-19関連肺炎190例、ほかの呼吸器ウイルス関連肺炎50例、細菌性肺炎252例、肺炎以外の呼吸不全93例であった。
・COVID-19患者のICU入室期間の長さは、主に呼吸不全を特徴とする臨床状態に起因していた。
・対象患者のうち、ICU入室中に少なくとも1回以上VAPを発症した患者の割合は35.5%であった。COVID-19の有無別にみると、非COVID-19患者では25.0%であったのに対し、COVID-19患者では57.4%と有意に高率であった(p<0.001)。
・COVID-19患者は非COVID-19患者と比べてVAPの罹患期間が有意に長かった(p<0.001)。
・VAPを1回発症した患者において、緩和ケアまたは死亡に至った割合は、VAPの治療に成功した患者が17.6%であったのに対し、VAPの治療転帰が不確定または治療失敗の患者では76.4%と有意に高率であった(p<0.001)。
本研究結果について、著者らは「VAPの治療失敗は死亡率の上昇に関連していた。重症COVID-19関連肺炎による死亡は、VAPの治療失敗のリスクを高める呼吸不全と関連し、多臓器不全との関連性は低いことが示唆された」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)