標準治療で十分な効果が得られなかった原発性胆汁性胆管炎の治療において、経口投与のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)α、δの二重作動薬であるelafibranorはプラセボと比較して、生化学的治療反応が有意に優れ、ALP値の正常化の割合も高いことが、米国・Liver Institute NorthwestのKris V. Kowdley氏らが実施したELATIVE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年11月13日号に掲載された。
14ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験
ELATIVE試験は、14ヵ国82施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年9月~2022年6月の期間に患者を登録した(フランスのGENFITおよびIpsenの助成を受けた)。
年齢18~75歳、原発性胆汁性胆管炎と診断され、標準治療のウルソデオキシコール酸の効果が不十分または許容できない副作用を認めた患者を、elafibranor(80mg、1日1回)またはプラセボを経口投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。
主要エンドポイントは、52週の時点での生化学的治療反応(ALP値が正常範囲上限の1.67倍未満で、ベースラインから15%以上減少し、総ビリルビン値が正常であることと定義)とした。
161例を登録し、elafibranor群に108例、プラセボ群に53例を割り付けた。ベースライン時に66例(elafibranor群44例、プラセボ22群)に中等度~重度のそう痒を認めた。平均(±SD)年齢は57.1±8.7歳で、96%が女性であり、平均ALP値は321.9±150.9U/Lであった。
有害事象は消化器症状の頻度が高い
52週時に生化学的治療反応を達成した患者は、プラセボ群が53例中2例(4%)であったのに対し、elafibranor群は108例中55例(51%)と有意に優れた(群間差:47%ポイント、95%信頼区間[CI]:32~57、p<0.001)。
52週時にALP値が正常化した患者は、プラセボ群では1例もなかったのと比較して、elafibranor群では15%と有意に良好であった(群間差:15%ポイント、95%CI:6~23、p=0.002)。
また、ALP値のベースラインから52週目までの最小二乗平均変化量は、elafibranor群が-117.0U/L(95%CI:-134.4~-99.6)、プラセボ群は-5.3U/L(-30.4~19.7)だった(群間差:-111.7U/L、95%CI:-142.0~-81.3)。
中等度~重度のそう痒を有していた患者における最悪のかゆみの数値評価尺度(WI-NRS、0[かゆみなし]~10[考えうる最悪のかゆみ]点)スコアの52週目までの最小二乗平均変化量は、elafibranor群が-1.93点、プラセボ群は-1.15点であり、両群間に有意な差はみられなかった(群間差:-0.78点、95%CI:-1.99~0.42、p=0.20)。
また、ベースラインで中等度~重度のそう痒を認めた患者におけるPBC-40 QOL質問票のかゆみドメインの52週目までの最小二乗平均変化量(群間差:-2.3、95%CI:-4.0~-0.7)、および5-Dかゆみ尺度の52週目までの変化量(群間差:-3.0、95%CI:-5.5~-0.5)は、いずれもプラセボ群に比べelafibranor群で良好だった。
試験期間中に発現した有害事象(elafibranor群96%、プラセボ群91%)、試験薬関連の有害事象(39%、40%)、重度の有害事象(11%、11%)、重篤な有害事象(10%、13%)、試験薬の投与中止の原因となった有害事象(10%、9%)の割合は、両群で同程度であった。また、10%以上で発現した有害事象やelafibranor群で頻度の高かった有害事象は、主に消化器症状(腹痛[11%、6%]、下痢[11%、9%]、悪心[11%、6%]、嘔吐[11%、2%])であった。elafibranor群で致死的な有害事象を2例(1.9%)に認めた。
著者は、「生化学的反応の改善効果は、他のPPAR標的治療薬の報告と一致している。また、ALP値の正常化は無移植生存率の改善と関連することが示されており、同値の正常化の割合はelafibranor群で有意に良好であった」とし、「本試験の結果により、elafibranorは原発性胆汁性胆管炎患者に対し有効で、新たな2次治療薬となる可能性が示された」と指摘している。現在、非盲検下に延長・確認第III相試験が進行中で、本薬の長期的な安全性および臨床アウトカムへの影響に関する追加データの評価を行っているという。
(医学ライター 菅野 守)