合併症のない症候性胆石症患者の症状再発と合併症の予防において、保存的治療は標準治療である腹腔鏡下胆嚢摘出術と比較して、QOLに関して差はないものの短期的(18ヵ月)には有効で、費用対効果が優れることから、手術に代わる治療法となる可能性があることが、英国・NHS GrampianのIrfan Ahmed氏らが実施した「C-GALL試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年12月6日号に掲載された。
英国20施設の実践的な無作為化対照比較試験
C-GALL試験は、英国の20の2次医療施設が参加した実践的な無作為化対照比較試験であり、2016年8月~2019年11月に患者の適格性の評価を行った(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価[HTA]プログラムなどの助成を受けた)。
年齢18歳以上で、2次医療施設に紹介された合併症のない症候性胆石症(胆石発作または急性胆嚢炎)で、胆嚢摘出術の適応と判定された患者を、保存的治療または腹腔鏡下胆嚢摘出術を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。
保存的治療では、経過観察と痛みを緩和するための鎮痛薬の処方が行われた(主に地域のプライマリケアで行われているもの)。
主要アウトカムはQOLとした。QOLは、short form 36(SF-36)の「体の痛み」ドメイン(平均50[SD 10]点の一般集団に合わせて変換したスコア)を用いて18ヵ月間の曲線下面積(AUC)で評価した(スコア[0~100点]が高いほどQOLが良好)。
24ヵ月時のAUCにも差はない
434例を登録し、保存的治療群に217例(平均年齢50.4[SD 15.1]歳、女性78%)、胆嚢摘出術群にも217例(50.5[15.3]歳、78%)を割り付けた。18ヵ月後までに、保存的治療群の54例(25%)、胆嚢摘出術群の146例(67%)が手術を受けた。
18ヵ月の時点でのSF-36の体の痛みの平均スコアは、保存的治療群が49.4(SD 11.7)点、胆嚢摘出術群は50.4(11.6)点であった。18ヵ月までのSF-36の体の痛みのAUCは、保存的治療群が46.8(SD 8.8)、胆嚢摘出術群も46.8(8.7)であり、両群間に差を認めなかった(平均差:0.0、95%信頼区間[CI]:-1.7~1.7、p=1.00)。
また、24ヵ月までのSF-36の体の痛みのAUCにも両群間に差はなかった(47.2[SD 8.6]vs.46.8[8.7]、平均差:-0.1、95%信用区間[CrI]:-1.8~1.6、p=0.94)。
費用が1,033ポンド低い、QALYと合併症には差がない
1例当たりの平均費用は、胆嚢摘出術群が2,510ポンドであったのに対し、保存的治療群は1,477ポンドと安価であった(補正後群間平均差:-1,033ポンド[-1,334ドル、-1,205ユーロ]、95%CrI:-1,413~-632ポンド)。
また、1例当たりの平均補正質調整生存年(QALY)は、保存的治療群が1.395、胆嚢摘出術群は1.413で、補正後群間平均差は-0.019(95%CrI:-0.06~0.02)であり、両群間に差を認めなかった。
18ヵ月の時点で、合併症は、保存的治療群が32例(15%)、胆嚢摘出術群は44例(20%)で発生した(相対リスク:0.72、95%CI:0.46~1.14、p=0.17)。また、18ヵ月までに少なくとも1つの追加治療を要した患者は、保存的治療群が9例(5%)、胆嚢摘出術群は12例(6%)だった(相対リスク:0.75、95%CI:0.31~1.78、p=0.51)。
著者は、「両群とも、18ヵ月以降も費用、合併症、有益性は発生し続けるため、今後は、有効性と生涯の費用対効果を確立し、通常治療として手術を行うべき患者コホートを特定するために、より長期のフォローアップに注目した研究が求められる」としている。
(医学ライター 菅野 守)