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睡眠呼吸障害の小児、扁桃摘出術は有効か/JAMA

いびきと軽度の睡眠時無呼吸を有する睡眠呼吸障害(SDB)の小児の治療において、アデノイド切除・口蓋扁桃摘出術は監視的待機(watchful waiting)と比較して、12ヵ月の時点での実行機能(executive function)および注意力(attention)を改善しないが、行動、症状、生活の質(QOL)、血圧などを有意に改善することが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のSusan Redline氏らが実施した「PATS試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年12月5日号に掲載された。
米国7施設の単盲検無作為化臨床試験
PATS試験は、米国の7つの睡眠センターで実施された単盲検無作為化臨床試験であり、2016年6月~2021年2月に参加者を登録した(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]協力協定の助成を受けた)。年齢3~12.9歳、習慣性のいびきがみられ、閉塞性の無呼吸低呼吸指数(AHI)が3点未満のSDB患児458例(平均年齢6.1歳、女児230例[50%])を登録し、早期にアデノイド切除・口蓋扁桃摘出術を施行する群(手術群)に231例、監視的待機を行う群に227例を無作為に割り付けた。
2つの主要アウトカムとして、実行機能を評価するための、保護者報告によるBehavior Rating Inventory of Executive Function(BRIEF)のGlobal Executive Composite(GEC)Tスコアと、コンピュータベースの注意検査であるGo/No-go(GNG)テストのd-prime信号検出スコアの、ベースラインから12ヵ月時までの変化量を評価した。
BRIEF GEC Tスコア、GNG d-primeスコアの変化量に差はない
ベースラインで169例(36.9%)が過体重または肥満で、108例(23.6%)に喘息の既往があり、282例(61.6%)で扁桃腺が口腔咽頭幅の50%以上を占めており、331例(72.3%)でAHIが1点未満(中央値0.5点[四分位範囲[IQR]:0.2~1.1])であった。12ヵ月の時点でのベースラインからのBRIEF GEC Tスコアの変化量は、手術群が-3.1点、監視的待機群は-1.9点であり、実行機能については両群間に統計学的に有意な差を認めなかった(群間差:-0.96点、95%信頼区間[CI]:-2.66~0.74、p=0.27)。
また、GNG d-primeスコアの12ヵ月時までの変化量は、手術群が0.2点、監視的待機群は0.1点と、注意力にも両群間に統計学的に有意な差はなかった(群間差:0.05点、95%CI:-0.18~0.27、p=0.68)。
有害事象の頻度は同程度
一方、行動上の問題(CBCL総問題スコア:-3.09点[97%CI:-4.90~-1.28]、p<0.001)、眠気(mESSスコア:-1.18点[-2.15~-0.21]、p=0.01)、SDB症状(PSQ-SRBDスコア:-0.16点[-0.20~-0.12]、p<0.001)、疾患特異的QOL(OSA-18スコア:-9.75点[-12.84~-6.65]、p<0.001)、全般的QOL(PedsQL総スコア:4.76点[1.44~8.09]、p=0.005)のベースラインから12ヵ月時までの変化量は、いずれも監視的待機群に比べ手術群で有意に改善した。手術群は監視的待機群と比較して、12ヵ月後の収縮期および拡張期血圧のパーセンタイル値の低下が大きかった(変化量の群間差:収縮期血圧:-9.02[97%CI:-15.49~-2.54]、p=0.006、拡張期血圧:-6.52[-11.59~-1.45]、p=0.01)。また、AHIが睡眠中1時間当たり3イベント以上へ進行した患児の割合は、監視的待機群が13.2%であったのに対し、手術群は1.3%と有意に少なかった(群間差:-11.2%[97%CI:-17.5~-4.9、p<0.001)。
6例(2.7%)が、アデノイド切除・口蓋扁桃摘出術に関連した重篤な有害事象を経験した。試験との関連を問わない有害事象が1件以上発生した患者は、手術群が175例、監視的待機群は172例であった。
著者は、「これらの知見は、睡眠ポリグラフ検査でAHIが低くても習慣性のいびきを呈する小児における、手術の有益性を排除するものではない。今後、どの小児がアデノイド切除・口蓋扁桃摘出術の恩恵を受ける可能性が高いかを特定するための、取り扱いが簡便なスクリーニング法を開発する研究が必要である」としている。
(医学ライター 菅野 守)
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