周産期うつ病、家族要因を問わず死亡リスク増大/BMJ
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スウェーデン・カロリンスカ研究所のNaela Hagatulah氏らは、同国の全国規模の住民ベース適合コホート試験の結果、周産期うつ病と診断された女性では、家族的要因を考慮してもとくに診断直後の1年間の自殺による死亡リスクが増加していたことを報告した。周産期うつ病は、妊娠に伴い最もよくみられる合併症の1つで、出産前後の女性の罹患率は最大で20%と報告されている。産後精神障害(精神病性障害、感情障害、不安障害など)を有する女性は、それらの影響を受けなかった女性や一般の女性集団と比べて死亡リスクが高いことが報告されているが、産前を含む周産期うつ病との関連についてエビデンスは限定的であった。また、家族内で共有する要因が周産期うつ病や自殺による死亡リスクの増加に寄与する可能性も指摘されているが、検討された試験データはなかった。著者は今回の結果を踏まえて、「周産期うつの影響を受けた女性、その家族、医療従事者は、これら周産期うつ病後の重大な健康リスクを認識する必要がある」と提言している。BMJ誌2024年1月10日号掲載の報告。
スウェーデンで行われた追跡期間18年間のコホート試験
研究グループは、周産期うつ病を発症した女性は、発症していない女性、および実の姉妹と比較して、死亡リスクの上昇が認められるかを調べるため、スウェーデンの全国規模の健康レジスターを活用して、国民ベースの適合コホート試験を行った。姉妹の比較のために共有する家族の交絡因子の調節も行った。レジスターの対象期間は2001年1月1日~2018年12月31日。対象被験者は、出産時の年齢と暦年で適合し特定した初めて周産期うつ病と診断され、専門的ケアと抗うつ薬の投与を受けた女性8万6,551人と、周産期うつ病に罹患しなかった女性86万5,510人であった。家族の交絡因子を調節するため、対象期間中に1人以上の単児出産をした実の姉妹27万586人(周産期うつ病罹患女性2万4,473人、非罹患の実姉妹24万6,113人)との比較も行われた。
主要アウトカムは、あらゆる要因による死亡。副次アウトカムは、死因別の死亡(すなわち、不自然および自然な死因)とした。
多変量Cox回帰法を用いて、交絡因子を考慮し、周産期うつ病の罹患女性と非罹患女性および姉妹を比較した死亡ハザード比を推算。周産期うつ病の経時的パターン、周産期うつ病発症の産前と産後の違いも検討した。
死亡リスクは2.11倍、産後うつ発症者でリスクが高い
最長18年間の追跡調査において、周産期うつ病と診断された女性522人の死亡(1,000人年当たり0.82人)が報告された(年齢中央値31.0歳[四分位範囲[IQR]:27.0~35.0])。周産期うつ病を罹患した女性は、非罹患女性と比較して死亡リスクの増大と関連していた(補正後ハザード比[HR]:2.11(95%信頼区間[CI]:1.86~2.40)。同様の関連は、精神障害の既往ありの女性となしの女性の間でも報告された。また、死亡リスクは、うつ病発症が産後の場合のほうが、産前の場合よりも高かった(HR:2.71[95%CI:2.26~3.26] vs.1.62[1.34~1.94])。姉妹間の比較においても、周産期うつ病について同様の関連性が認められた(2.12[1.16~3.88])。
関連性は、周産期うつ病発症後1年以内に最も顕著であり、追跡調査開始後18年間にわたり継続していた。
周産期うつ病の女性において、死亡リスクの増加は、死因を問わず関連が認められ(不自然な死因のHR:4.28[95%CI:3.44~5.32] vs.自然な死因のHR:1.38[95%CI:1.16~1.64])、その中で自殺の件数は少なかったが(1,000人年当たり0.23)、関連性は最も強かった(6.34[4.62~8.71])。
(ケアネット)
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