周産期うつ病は、女性で問題となる重大な精神疾患の1つである。しかし、十分なレビューが行われておらず、日本人女性の周産期うつ病の有病率については、一定のコンセンサスが得られていない。獨協医科大学の徳満 敬大氏らは、日本人女性の周産期うつ病の信頼できる有病率の推定を試みた。Annals of General Psychiatry誌2020年6月26日号の報告。
産後うつ病の有病率は1ヵ月時点で14.3%
1994~2017年に発表された出産前または産後うつ病の有病率に関するデータを含む研究を、2つのデータベース(PubMed、ICHUSHI)より特定した。公開されたレポートよりデータを抽出した。
周産期うつ病の有病率を推定した主な結果は以下のとおり。
・1,317件のアブストラクトをレビューし、301件の文献を特定。研究には123件を含めた。
・日本人女性10万8,431例中、1ヵ月時点での産後うつ病の有病率は14.3%であった。
・妊娠中のうつ病有病率は、妊娠第2三半期で14.0%、妊娠第3三半期で16.3%であった。
・産後うつ病の期間ごとの有病率は以下のとおりであった。
●産後1ヵ月以内:15.1%
●1~3ヵ月:11.6%
●3~6ヵ月:11.5%
●6~12ヵ月:11.5%
・初産婦は、経産婦(2回以上の出産を経験した女性)と比較し、産後うつ病の有病率が有意に上昇した(調整相対リスク:1.76)。
著者らは「出産に伴ううつ病の有病率は、出産が近づくにつれ増加し、産後の時間とともに減少すると考えられる。また、初産婦では産後うつ病リスクが高かったことから、医療従事者は初産婦により注意を払う必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)