駆出率低下、QRS幅延長を認めるニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類II/III度の心不全患者は、植込み型除細動器(ICD)と比べて両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)の治療を受けたほうが、追跡期間中央値約14年時点においても、生存ベネフィットが維持されていたことが示された。カナダ・アルバータ大学のJohn L. Sapp氏らが、「Resynchronization-Defibrillation for Ambulatory Heart Failure Trial(RAFT)」の長期アウトカムの結果を報告した。RAFT試験では、CRT-D治療を受けた患者のほうがICD治療を患者と比べて、5年時点で、死亡率に関するベネフィットが大きかったことが示されていたが、長期生存へのCRT-D治療の効果は明らかになっていなかった。NEJM誌2024年1月18日号掲載の報告。
RAFT試験参加の8施設被験者1,050例を長期追跡
RAFT試験では、NYHA心機能分類II/III度の心不全を有し、左室駆出率30%以下、内因性QRS幅120msec以上(またはペーシングQRS幅200msec以上)の患者が、ICD治療群とCRT-D治療群に無作為に割り付けられ追跡評価を受けた。試験登録は2009年に完了し、登録被験者1,798例について、平均追跡期間40±20ヵ月時点で、CRT-D治療群がICD治療群よりも死亡または心不全によるあらゆる入院(主要アウトカム)についてリスクが有意に低かったことが示された(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.64~0.87、p<0.001)。
研究グループは、RAFT試験に参加した施設のうち、被験者数が多かった8施設の患者(計1,050例[CRT-D治療群520例、ICD治療群530例])を対象に、長期アウトカムを評価した。主要アウトカムは全死因死亡で、副次アウトカムは全死因死亡、心移植、補助人工心臓の植え込みの複合とした。
追跡期間中央値13.9年、死亡までの期間はCRT-D治療群で長い傾向
長期生存試験の被験者1,050例の追跡期間中央値は7.7年(四分位範囲[IQR]:3.9~12.8)で、生存患者の同中央値は13.9年(12.8~15.7)だった。
死亡は、CRT-D治療群520例中370例(71.2%)、ICD治療群530例中405例(76.4%)に発生した。死亡までの期間は、CRT-D治療群がICD治療群より長い傾向が認められた(加速係数:0.80、95%CI:0.69~0.92、p=0.002)。
副次アウトカムは、CRT-D治療群392例(75.4%)、ICD治療群412例(77.7%)の発生が報告された。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)