心臓再同期療法における左室の逆リモデリングと長期予後【Dr.河田pick up】

提供元:ケアネット

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公開日:2019/10/11

 

 心臓再同期療法(CRT)が有効とされる主な機序は、左室逆リモデリングおよび左室収縮期径の縮小である。MADIT-CRT(Multicenter Automatic Defibrillator Implantation Trial With Cardiac Resynchronization Therapy)試験は、軽度の心不全(NYHA I-II、LVEF<30%、QRS≧130ms)を有する心筋症患者において、CRTの有効性を調べた研究であり、2011年に発表された。その結果により、CRTの適応が拡大された経緯がある。今回、米国・ロチェスター大学のValentina Kutyifa氏ら研究グループがMADIT-CRTの長期フォローのデータを用い、CRTにおける左室収縮末期容量の改善および死亡への影響、その関係性は左脚ブロック(LBBB)において影響があるのかどうかを検証した。JACC-EP誌2019年9月号に掲載。

左室収縮末期容量の変化をLBBB/非LBBBで層別解析
 CRTを導入した患者において、左室逆リモデリングの検出は、予後の予測に有用であることが示されているが、どの程度、長期の生存率に貢献しているかは不明である。そこで研究グループは、MADIT-CRTに登録されたデータのうち、CRT-Dの植込みを受け、かつ1年後の心エコーによるフォローを受けた752例について、左室収縮末期容量の変化についてLBBB群/非LBBB群で層別解析を行い、長期の全死亡率と関連付けると共に、植込み型除細動器 (ICD)のみのケース(684例)と比較した。

左脚ブロック患者では左室逆リモデリングが長期予後の改善に関連
 LBBB群では、左室収縮末期容量の減少が35%(平均中央値)以上の場合、ICDのみの患者と比べ、長期死亡リスク(ハザード比[HR]:0.34、p<0.001)、心不全イベント(HR:0.21、p<0.001)、心不全もしくは死亡(HR:0.27、p<0.001)がいずれも減少していた。また、左室収縮末期容量の減少が35%以下の場合、ICD例と比べ、心不全リスクおよび死亡リスクがいずれも有意に減少したが、死亡率に関しては、減少したものの有意なレベルではなかった。左室収縮末期容量の減少は、その程度に関わらず、心不全イベントのリスクの低下がみられた。
一方、非LBBB群では、左室収縮末期容量が平均値よりも減少していたにも関わらず(27.6%>)、生存率の改善は認められなかった(HR:0.68、p=0.271)。また、非LBBB群のCRT-D例では、逆リモデリングは最小で(第1四分位)、ICD例と比べ死亡リスクが3倍以上も高かった。

非左脚ブロックでも逆リモデリングが認められたが、予後の改善は見られず
 LBBB群のCRT-D例では、1年後のフォロー時において、左室収縮末期容量の減少は、長期予後の改善と関連していた。一方、非LBBB群では、左室逆リモデリングが認められたにもかかわらず、CRT-D例では生存率の改善はみられず、予後不良となるケースすらあった。こうした結果から筆者らは、CRT-D植込み後の軽度心不全において、左室逆リモデリングについての評価は簡易で有用であると結論付けている。

(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)