進行した慢性疾患を有する高齢患者の入院時に、緩和ケア相談がデフォルトでオーダーされていても在院日数を短縮しなかったが、緩和ケア提供の増加や迅速化ならびに終末期ケアの一部のプロセスは改善した。米国・ペンシルベニア大学のKatherine R. Courtright氏らによる、プラグマティックなステップウェッジクラスター無作為化試験の結果が報告された。入院患者への緩和ケア提供の増加が優先課題となっているが、その有効性に関する大規模で実験的なエビデンスは不足していた。JAMA誌2024年1月16日号掲載の報告。
入院当日(デフォルト設定)vs.医師選択実施で在院日数を評価
研究グループは、2016年3月21日~2018年11月14日に、米国の非営利医療システム「アセンション(Ascension)」の地域病院で緩和ケアプログラムが確立されている11施設において、65歳以上の進行した慢性閉塞性肺疾患患者(過去1年以内に2回以上の入院歴または長期酸素療法患者)、腎不全患者(長期透析患者)または認知症患者(胃瘻・空腸瘻栄養、または過去1年以内に2回以上の入院歴)を入院時に登録し、無作為に決定された順で介入または通常ケアを行った。
介入群では最初の入院日(full hospital day)の午後3時に緩和ケア相談がデフォルトでオーダーされ(医師がキャンセルすることは可能)、通常ケア群では医師がいつでも緩和ケア相談をオーダーすることができた。
主要アウトカムは在院日数、副次アウトカムは緩和ケア相談受診率、蘇生処置拒否指示、ホスピスへの退院、院内死亡率等とした。アウトカムデータの収集終了は2019年1月31日。
在院日数に差はないが、緩和ケア相談受診率は44% vs.17%
合計3万4,239例が登録され、このうち入院期間が72時間以上であった2万4,065例(女性1万3,338例[55.4%]、平均年齢77.9歳)を主要解析対象集団とした(介入群1万313例vs.通常ケア群1万3,752例)。
介入群では通常ケア群と比較して、緩和ケア相談を受けた患者の割合が高く(43.9% vs.16.6%、補正後オッズ比[aOR]:5.17、95%信頼区間[CI]:4.59~5.81)、緩和ケア相談までの時間が26.7%短かったが(入院後の平均[±SD]日数:3.4±2.6日vs.4.6±4.8日、p<0.001)、在院日数は両群で差がなかった(4.9日vs.5.0日、在院日数中央値の変化量[%]の差:-0.53%[95%CI:-3.51~2.53])。
また、介入群は通常ケア群と比較して、退院時の蘇生処置拒否指示(aOR:1.40[95%CI:1.21~1.63])およびホスピスへの退院(1.30、1.07~1.57)の割合が高かったが、院内死亡率は同程度であった(4.7% vs.4.2%、aOR:0.86[95%CI:0.68~1.08])。
(ケアネット)