第109回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、12月7日に開催された。その中で「新型コロナ患者の自宅での死亡事例に関する自治体からの報告について」が報告された。
調査期間中776名の自宅で死亡した者の解析から、死亡者の79%が70代以上であり、基礎疾患がある者が69%、親族などと同居が42%いた。また、ワクチン接種歴も不明が34%で一番多いものの、「3回接種」も28%と多かった。
政府では、「Withコロナに向けた政策の考え方」に則り、今後必要な医療資機材の提供、国民への正確な知識の普及に努めるとしている。
以下に概要を示す。
70代以上の高齢者で、基礎疾患がある人は死亡が多い
【調査概要】
期間: 2022年7月1日~8月31日
地域:全国都道府県
条件:新型コロナウイルス感染症患者(死後陽性確認者も含む)で自宅にて死亡した者を本年10月に都道府県を通じ、その年齢、基礎疾患、同居の有無、ワクチン接種歴、死亡に至るまでの経過などを調査(ただし自宅療養中に症状が悪化し、医療機関に入院した後に死亡した事例は除く)。
【結果概要】
合計776名(男性460名、女性316名)
(死亡時の年齢構成)
80代以上が58%、70代以上が21%、60代以上が9%
(基礎疾患の有無)
「あり」が69%、「なし」が19%、「不明」が12%
(ワクチンの接種歴)
「不明」が34%、「3回」が28%、「未接種」が20%
(単身・同居などの状況)
「不明」が48%、「同居」が42%、「単身」が10%
その他の事項は次のとおり。
・死亡直前の診断時の症状の程度について、軽症・無症状が41.4%、中等症が13.1%、重症が7.1%、不明または死亡後診断が38.4%
・生前に陽性が判明した者は70.1%、死後に陽性が判明した者は29.9%
・発生届の届出日が死亡日よりも前であった事例が50.6%、発生届の届出日が死亡日と同日であった事例が31.2%、発生届の届出日が死亡日以降であった事例が17.9%、不明が0.3%
・自宅療養の希望ありが22.8%、希望なしが10.3%、不明者および死後陽性が判明した者が66.9%
発熱がなく、毎日訪問介護を受けていても死亡のケースも
【具体的な死亡事例について】
・救急搬送の搬入時の検査で陽性が判明したケース。
・家族や親族などに自宅で倒れているところを発見されたケース。
・陽性が判明したが、本人や家族の意思により自宅療養を希望したケース。
・高齢であることや末期がんであることにより自宅での看取りを希望したケース。
・自宅療養中に急速に重症化して死亡したケース。
・同居家族から感染し、自宅での死亡につながったケース。
・コロナ以外の要因で死亡し、死後に陽性が判明したケース。
・入院や宿泊療養、治療を希望しないケース。
・浴槽で意識がなくなっているところを同居家族に発見されたケース。
・入院調整や宿泊療養の対象となるも、直後に死亡したケース。
・主治医からの健康観察や訪問看護を受けていたものの、死亡したケース。
・自宅訪問するも応答なく、警察に協力依頼を行ったケース。
・症状があったが検査や受診を受けずに、死後に陽性が判明したケース。
・家族は入院を希望していたが、自宅療養となり、死亡したケース。
・発熱がなく、毎日訪問介護を受けていたが、死亡したケース。
【自治体での取組事例】
・体調の変化・悪化の早期把握のため、自宅療養開始時の説明、ホームページ、SMSなどで電話相談窓口への連絡を自宅療養者に対して周知。
・療養者支援センターを開設。若年層にはSMSを利用して調査を実施し、保健所が電話で調査すべき対象者を重症化リスクが高い方に絞ることで連絡遅滞を防ぐ改善を行った。
・陽性者からの要請があった場合、感染防護対策を行ったうえで、直ちに現場に向かう体制を施行。
【今後の対応】
「
Withコロナに向けた政策の考え方」の考え方に則り、入院治療が必要な患者への対応の強化、発熱外来や電話診療・オンライン診療の体制強化、治療薬の円滑な供給、健康フォローアップセンターの拡充と自己検査キットの確保などの対策を進めるとともに、国民への情報提供と重症化リスクなどに応じた外来受診・療養への協力の呼びかけなどに取り組んでいく。
(ケアネット 稲川 進)