最小限の母乳しか与えられなかった超早産児は、ドナーミルクまたは早産児用粉ミルクのいずれを与えられても、修正月齢22~26ヵ月時点の神経発達アウトカムに差異は認められなかった。米国・アイオワ大学のTarah T. Colaizy氏らが、Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development Neonatal Research Networkに参加している米国の大学医療センター15施設で実施した無作為化二重盲検臨床試験「MILK試験」の結果を報告した。出生後入院中の超早産児の母乳育児は、早産児用粉ミルクと比較して神経発達の良好なアウトカムと関連しているが、母乳をまったく与えていない、または最小限しか与えていない超早産児において、ドナーミルクが早産児用粉ミルクと同様の神経発達上の利点をもたらすかは不明であった。JAMA誌オンライン版2024年1月30日号掲載の報告。
修正月齢22~26ヵ月でのBSID認知スコアを比較
研究グループは、2012年9月7日~2019年3月13日に、生後7日未満で参加施設に入院した在胎週数29週0日未満または出生時体重1,000g未満の新生児を登録した。主な登録基準は、(1)出産した母親が授乳を開始していない、(2)授乳は開始されたが出産後21日以前に母親が搾乳を中止、(3)出生後7~21日の間、母乳供給量が最小限(5日間の平均母乳量が3オンス/日以下)であった。
登録した新生児をドナーミルク群または早産児用粉ミルク群に無作為に割り付け、無作為化から生後120日時点か死亡または退院のいずれか早い日まで与えた。母乳の基準が満たされていれば、生後21日目までいつでも無作為化できるとした。
主要アウトカムは、修正月齢22~26ヵ月で測定されたBayley乳幼児発達検査(BSID)の認知スコアとした。無作為化から修正月齢22~26ヵ月の間に死亡した乳児には、54ポイント(スコア範囲:54~155、≧85は神経発達の遅れがないことを示す)を割り当てた。副次アウトカムは、BSIDの言語および運動スコア、院内での成長、壊死性腸炎、死亡などを含む24項目であった。修正月齢22~26ヵ月の追跡調査終了日は2021年11月15日であった。
ドナーミルク群と早産児用粉ミルク群で神経発達アウトカムに有意差なし
適格新生児1,965例のうち、483例が無作為化された(ドナーミルク群239例、早産児用粉ミルク群244例)。在胎週数中央値は26週(四分位範囲[IQR]:25~27)、出生時体重中央値は840g(IQR:676~986g)、女児52%であった。出産した母親の人種は、自己申告で黒人52%(247/478例)、白人43%(206/478例)、その他5%(25/478例)であった。
追跡調査前に死亡した乳児は54例だった。生存乳児の88%(376/429例)は、修正月齢22~26ヵ月で評価された。
調整平均BSID認知スコアは、ドナーミルク群80.7(SD 17.4)、早産児用粉ミルク群81.1(SD 16.7)、補正後平均群間差は-0.77(95%信頼区間[CI]:-3.93~2.39)で、両群間に有意差はなかった。補正後平均BSID言語スコアおよび運動スコアにも有意差は認められなかった。
死亡率(追跡調査前の死亡)は、ドナーミルク群13%(29/231例)、早産児用粉ミルク群11%(25/233例)であった(補正後群間リスク差:-1%、95%CI:-4~2)。壊死性腸炎は、ドナーミルク群では4.2%(10/239例)に発生したが、早産児用粉ミルク群では9.0%(22/244例)に発生した(-5%、-9~-2%)。
体重増加は、ドナーミルク群22.3g/kg/日(95%CI:21.3~23.3)、早産児用粉ミルク群24.6g/kg/日(23.6~25.6)で、ドナーミルク群のほうが緩徐であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)