超早産児では、入院を要する感染症は疾病罹患や死亡の重大な原因とされる。英国・オックスフォード大学のJames Griffiths氏らELFIN試験の研究グループは、ウシ由来ラクトフェリンの経腸補充療法による遅発性感染症の抑制効果を検討した。その結果、期待された有効性は得られなかったことを、Lancet誌オンライン版2019年1月8日号で発表した。以前の小規模な試験により、超早産児の経腸栄養食に、牛乳から抽出された抗菌性タンパク質であるラクトフェリンを補充する方法が、感染症および関連合併症を予防する可能性が示唆されていた。
予防効果を検証する大規模臨床試験
本研究は、英国の37施設が参加した大規模なプラセボ対照無作為化試験であり、以前の試験のエビデンスの妥当性および適用可能性を強化するデータの収集を目的に行われた(英国国立健康研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。
対象は、出生時在胎期間が32週未満の超早産児で、割り付け時に生後72時間以内の新生児とした。重度の先天異常、経腸栄養ができない期間が14日以上と予測される場合、生存の見込みがない場合は試験に組み入れなかった。
被験者は、ウシ由来ラクトフェリン(150mg/kg/日、最大300mg/日)またはショ糖(対照)の投与を受ける群に無作為に割り付けられ、月経後年齢(postmenstrual age)34週まで投与が継続された。保護者、医療従事者、アウトカム評価者には、割り付け情報が知らされなかった。
主要アウトカムは、微生物学的に確定または臨床的に疑われる遅発性感染症(生後72時間以降に発症)とし、相対リスクおよび95%信頼区間(CI)を算出した。
遅発性感染症発生率:ラクトフェリン群29%vs.対照群31%
2014年5月~2017年9月の期間に2,203例が登録され、ラクトフェリン群に1,099例、対照群には1,104例が割り付けられ、それぞれ1,098例、1,101例が解析に含まれた。主要アウトカムの修正ITT解析には、2,182例(ラクトフェリン群:1,093例[99.5%]、対照群:1,089例[99.0%])のデータを用いた。
遅発性感染症は、ラクトフェリン群で29%(316例)、対照群では31%(334例)に発生し、最小限の因子で補正したリスク比は0.95(95%CI:0.86~1.04、p=0.233)と、両群間に有意な差を認めなかった。微生物学的に確定された遅発性感染症、全死因死亡、壊死性腸炎、未熟児網膜症、気管支肺異形成症などの副次アウトカムにも有意差はみられなかった。
試験期間中に、重篤な有害事象がラクトフェリン群の16例(1.5%)、対照群の10例(0.9%)にみられた。このうちラクトフェリン群の2例(原因不明の血便、壊死性腸炎によると推測される腸管穿孔後の死亡)が、試験介入に関連する可能性があると判定された。
著者は、「これらのデータは、超早産児の遅発性感染症、およびこれに関連する罹患や死亡の予防における、経腸ラクトフェリン補充のルーチンの使用を支持しない」としている。
(医学ライター 菅野 守)