早期の低リスク子宮頸がん女性では、子宮傍組織浸潤の発生率は1%未満であることが複数の後ろ向き研究で示されており、標準治療である広汎子宮全摘出術の必要性について疑問が生じている。カナダ・Centre Hospitalier Universitaire de QuebecのMarie Plante氏らは「CX.5 SHAPE試験」において、3年骨盤内再発率に関して、単純子宮全摘出術は広汎子宮全摘出術に対し非劣性であり、尿失禁や尿閉のリスクは有意に低いことを示した。研究の成果は、NEJM誌2024年2月29日号で報告された。
12ヵ国の第III相無作為化非劣性試験
CX.5 SHAPE試験は、12ヵ国130施設で実施した第III相無作為化非劣性試験であり、2012年12月~2019年11月の期間に参加者を募集した(Canadian Cancer Societyなどの助成を受けた)。
子宮頸部の扁平上皮がん、腺がんまたは腺扁平上皮がんを有し、低リスク(病変の大きさ≦2cm、間質浸潤<10mmまたは<50%またはこれら両方、術前の画像所見でリンパ節転移がない)の患者700例を登録し、リンパ節の評価を含めた単純子宮全摘出術を受ける群に350例(年齢中央値42歳[範囲:26~77])、広汎子宮全摘出術を受ける群にも350例(45歳[24~80])を無作為に割り付けた。
主要アウトカムは、3年の時点での骨盤領域のがんの再発(骨盤内再発)であった。事前に、3年骨盤内再発率の群間差の非劣性マージンを4ポイントと規定した。
per-protocol解析でもほぼ同じ結果
全体の91.7%の腫瘍が2009年の国際産婦人科連合(FIGO)分類のIB
1期であり、61.7%が扁平上皮細胞の組織学的特徴を持ち、59.3%がグレード1または2の腫瘍であった。追跡期間中央値は4.5年だった。
ITT解析では、骨盤内再発は単純子宮全摘出術群で11例(3.1%)、広汎子宮全摘出術群で10例(2.9%)に、骨盤外再発はそれぞれ7例(2.0%)および2例(0.6%)に認めた。
3年骨盤内再発率は、単純子宮全摘出術群2.52%、広汎子宮全摘出術群2.17%であり(絶対群間差:0.35ポイント、90%信頼区間[CI]:-1.62~2.32)、90%CIの上限値が非劣性マージンを満たしたことから、単純子宮全摘出術群は広汎子宮全摘出術群に対し非劣性と判定した。
また、per-protocol解析(単純子宮全摘出術群317例、広汎子宮全摘出術群312例)でも、結果はITT解析とほぼ同じだった。
手術関連有害事象、QOL、性機能も良好
術中の外科的合併症は、単純子宮全摘出術群7.1%、広汎子宮全摘出術群6.4%で発生した。また、術後4週間以内の手術関連有害事象は、単純子宮全摘出術群のほうが少なかった(42.6% vs.50.6%、p=0.04)。
尿失禁の発生率は、術後4週間以内(単純子宮全摘出術群2.4% vs.広汎子宮全摘出術群5.5%、p=0.048)および4週間以降(4.7% vs.11.0%、p=0.003)のいずれも、広汎子宮全摘出術群に比べ単純子宮全摘出術群で低かった。
尿閉の発生率も、術後4週間以内(単純子宮全摘出術群0.6% vs.広汎子宮全摘出術群 11.0%、p<0.001)および4週間以降(0.6% vs.9.9%、p<0.001)の双方において、単純子宮全摘出術群で低率だった。
また、患者報告による生活の質(QOL)および性機能指標も、全体として単純子宮全摘出術群のほうが良好であった。
著者は、「本試験のデータは、100例を対象とした単純子宮全摘出術の第II相単群実行可能性試験(ConCerv試験)の結果(2年再発率3.5%)と一致する。最近、更新されたNCCNガイドラインでは、ConCerv試験の基準をすべて満たす患者のみが広汎子宮全摘出術の代替療法の対象となるとしているが、今回のSHAPE試験とは患者の適格基準や除外基準、背景因子に異なる点があるため、今後、より多くのデータの収集が求められる」と考察している。
(医学ライター 菅野 守)