抗C5モノクローナル抗体療法を受けているが貧血が持続する発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者、および補体阻害薬の治療歴がなく乳酸脱水素酵素(LDH)が高値のPNH患者に対し、経口B因子阻害薬のiptacopanは、赤血球輸血なしでのヘモグロビン値上昇をもたらしたことが示された。フランス・サン・ルイ病院のRegis Peffault de Latour氏らが、2件の第III相臨床試験の結果を報告した。抗C5抗体療法を受けている患者あるいは補体阻害薬治療を受けていないPNH患者にとって、溶血性貧血の持続と経口薬がないことは大きな課題だった。NEJM誌2024年3月14日号掲載の報告。
赤血球輸血なしでのヘモグロビン値の上昇を評価
研究グループは、ヘモグロビン値10g/dL未満のPNH患者を対象にした2件の第III相試験で、24週間のiptacopan単剤療法を評価した。第1試験では、抗C5抗体療法を受けていた患者を、iptacopanに切り替える群と、抗C5抗体療法を継続する群に無作為に割り付け評価。第2試験は単群試験で、補体阻害薬による治療歴がなく、LDHが正常上限値の1.5倍超の患者にiptacopanを投与し評価した。
第1試験の主要エンドポイントは2つで、いずれも赤血球輸血なしで、ヘモグロビン値がベースラインから2g/dL以上上昇すること、ヘモグロビン値が12g/dL以上になることだった。第2試験の主要エンドポイントは、赤血球輸血なしで、ヘモグロビン値がベースラインから2g/dL以上上昇することだった。
ヘモグロビン値12g/dL以上への改善、iptacopan群42/60例、抗C5抗体療法群0例
第1試験では、iptacopanを受けた60例のうち51例が、赤血球輸血なしでヘモグロビン値がベースラインから2g/dL以上上昇し、うち同42例はヘモグロビン値12g/dL以上となった。抗C5抗体療法を受けた35例の患者では、主要エンドポイントの達成は認められなかった。
第2試験では、31/33例が、赤血球輸血なしでヘモグロビン値がベースラインから2g/dL以上上昇した。
第1試験ではiptacopan群62例中59例で、抗C5抗体療法継続群35例中14例が輸血を必要としなかったか受けなかった。第2試験では、輸血を必要としたまたは受けた人はいなかった。
iptacopan投与によって、ヘモグロビン値が上昇、疲労が軽減され、網赤血球数とビリルビン値が低下し、その結果、LDH平均値が正常値上限の1.5倍未満となった。iptacopanによる有害事象で最も多くみられたのは、頭痛だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)