注意欠如・多動症(ADHD)患者への薬物療法は、全死因死亡リスクを有意に低減することが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLin Li氏らが、約15万例のADHD患者を対象に行った全国的な観察コホート試験で明らかにした。ADHDは早期死亡を含む有害な健康アウトカムのリスク増大と関連していることが知られているが、ADHD薬物療法が死亡リスクに影響を与えるかどうかについては不明だった。JAMA誌2024年3月12日号掲載の報告。
ADHD診断後2年間の全死因、自然死因、非自然死因の死亡率を比較
研究グループは、今回スウェーデンで行われた観察コホート試験について、標的試験模倣フレームワークを用い、2007~18年にADHDの診断を受け、診断前にADHD薬物療法を受けていなかった6~64歳を特定した。ADHDの診断から、死亡、移住、ADHD診断後2年、2020年12月31日のいずれか早い時点まで追跡した。ADHD薬物療法の開始は、診断後3ヵ月以内の処方で定義した。
ADHD診断後2年間の全死因死亡、自然死因(身体の状態によるなど)、非自然死因(不慮の傷害、自殺、偶発的な中毒によるなど)を評価した。
ADHD薬物療法、自然死は低減せず
ADHDと診断された14万8,578例(女性6万1,356例、41.3%)のうち、診断後3ヵ月以内にADHD薬物療法を開始したのは8万4,204例(56.7%)だった。診断時の年齢中央値は17.4歳(四分位範囲:11.6~29.1)だった。
ADHD診断後3ヵ月以内に薬物療法を開始し継続する「治療開始戦略」群と、薬物療法を行わない「非治療開始戦略」群の2年全死因死亡リスクは、それぞれ39.1/1万人と48.1/1万人だった(リスク差:-8.9/1万人、95%信頼区間[CI]:-17.3~-0.6)。
ADHD薬物療法の開始は、全死因死亡(ハザード比[HR]:0.79、95%CI:0.70~0.88)、非自然死(2年死亡リスク:治療開始戦略群25.9/1万人vs.非治療開始戦略群33.3/1万人、群間差:-7.4/1万人[95%CI:-14.2~-0.5]、HR:0.75[95%CI:0.66~0.86])の有意な低減と関連していた。
一方で、自然死の低減には関連していなかった(2年死亡リスク:治療開始戦略群13.1/1万人vs.非治療開始戦略群14.7/1万人、群間差:-1.6/1万人[95%CI:-6.4~3.2]、HR:0.86[95%CI:0.71~1.05])。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)