ADHD治療薬、長期使用で心血管疾患リスク増大

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/02/09

 

 注意欠如・多動症(ADHD)の罹患者数は過去数十年で大幅に増加しており、治療薬の処方もそれに伴い増加している。ADHD治療薬には心拍数・血圧の上昇との関連が報告されているが、これに関し、重大な心血管疾患(CVD)との関連を調査した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLe Zhang氏らによる本研究の結果は、JAMA Psychiatry誌2024年2月1日号に掲載された。

 2007~20年にスウェーデン国内でADHD診断を受けた、または同国で承認されたADHD治療薬である精神刺激薬(メチルフェニデート・アンフェタミン・デキストロアンフェタミン・リスデキサンフェタミン)および非精神刺激薬(アトモキセチン・グアンファシン)のいずれかの処方を受けた6~64歳の患者を対象に、ADHD治療薬の長期使用とCVD(虚血性心疾患・脳血管疾患・高血圧・心不全・不整脈・血栓塞栓症・動脈疾患・その他の心疾患)の関連を調査した。CVDの既往歴がある患者は除外され、ADHD治療薬の累積使用期間は14年以内であった。

 主な結果は以下のとおり。

・CVDを発症した1万388例(年齢中央値34.6歳、男性59.2%)を同定し、CVDを有さない対照者5万1,672例とマッチさせた。両群の追跡期中央値は4.1年だった。
・ADHD治療薬の使用期間が長いほど、非使用者と比較したCVDリスクが増加していた。(使用期間1~2年の調整オッズ比[aOR]:1.09、3~5年:1.27、5年超:1.23)。
・ADHD治療薬の長期使用は高血圧(5年超のaOR:1.80)、動脈疾患(5年超のaOR:1.49)のリスク増加と関連していた。
・14年の追跡期間全体では、ADHD治療薬の使用期間が1年延長するごとにCVDリスクが4%増加し、最初の3年は8%とより大きなリスク増加が見られた。小児および青年(25歳未満)、成人(25歳以上)において同様のパターンが観察された。

 研究者らは「この症例対照研究では、ADHD治療薬の長期服用がCVD、とくに高血圧と動脈疾患のリスク増加と関連していることが明らかになった。これらの所見は、ADHD治療薬の長期使用について治療方針を決定する際に、潜在的な利益とリスクを慎重に比較検討することの重要性を強調するものである。臨床医は治療期間中、定期的かつ一貫して心血管系の徴候や症状をモニタリングすべきである」と結論付けている。

(ケアネット 杉崎 真名)