大腸がんスクリーニング、次世代便DNA検査の精度は?/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/03/22

 

 次世代マルチターゲット便DNA検査は、大腸がんおよび進行前がん病変の検出感度が免疫便潜血検査(FIT)より高かったものの、特異度は低かった。米国・インディアナ大学医学校のThomas F. Imperiale氏らが、全米186施設で実施した「BLUE-C試験」の結果を報告した。次世代マルチターゲット便DNA検査は、DNA分子マーカーおよびヘモグロビン値の評価を含む、大腸がんスクリーニングの主に特異度を改善させるために開発されたものであった。NEJM誌2024年3月14日号掲載の報告。

主要アウトカムは、大腸がんに対する感度と進行新生物に対する特異度

 研究グループは、大腸がんスクリーニングのための内視鏡検査を受ける予定の40歳以上の無症状の成人を登録し、大腸内視鏡検査を受ける前に便検体を郵送してもらい、次世代マルチターゲット便DNA検査(Exact Sciences)ならびにFITを実施した。大腸内視鏡検査は、便検体採取後180日以内に実施された場合に評価対象とした。

 主要評価項目は、大腸がんに対するマルチターゲット便DNA検査の感度と、進行新生物(大腸がんまたは進行前がん病変)に対する特異度とした。感度は、検査結果陽性者のうち大腸がんであった人の割合、特異度は進行新生物が認められなかった人のうち検査結果が陰性であった人の割合と定義した。進行前がん病変は、最長径1cm以上の腺腫または無茎性鋸歯状病変、絨毛状の組織学的特徴を伴う病変、高度異形成などを対象に含んだ。

 副次評価項目は、進行前がん病変に対する感度、非腫瘍性所見または大腸内視鏡検査陰性に対する特異度、マルチターゲット便DNA検査と市販のFITの大腸がん、および進行前がん病変に対する感度の比較などとした。

次世代検査vs.FITの大腸がんの感度、93.9% vs.67.3%

 2019年11月15日~2023年1月5日に、2万6,758例が登録され、このうち2万176例が完全評価可能例であった。

 解析対象2万176例のうち、大腸がんは98例(0.5%)、進行前がん病変は2,144例(10.6%)、非進行性腺腫は6,973例(34.6%)が有していた。残る1万961例は、非腫瘍性所見3,451例(17.1%)もしくは大腸内視鏡検査陰性7,510例(37.2%)であった。

 マルチターゲット便DNA検査で大腸がんが特定されたのは98例中92例で、感度は93.9%(95%信頼区間[CI]:87.1~97.7)であった。進行新生物に対する特異度は90.6%(95%CI:90.1~91.0)であり、進行前がん病変に対する感度は43.4%(41.3~45.6)、非腫瘍性所見または大腸内視鏡検査陰性に対する特異度は92.7%(92.2~93.1)であった。

 一方、FITの感度は、大腸がんが67.3%(95%CI:57.1~76.5)、進行前がん病変が23.3%(21.5~25.2)で、進行新生物に関する特異度は94.8%(95%CI:94.4~95.1)、非腫瘍性所見または大腸内視鏡検査陰性については95.7%(95.3~96.1)であった。

 次世代マルチターゲット便DNA検査はFITと比較して、大腸がんおよび進行前がん病変の検出に関して感度が高かったが(いずれもp<0.001)、進行新生物に対する特異度はFITより低かった(p<0.001)。

 有害事象の発現は確認されなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)