心臓移植の待機リストに登録している移植候補者に関して、移植施設の医療チームが心臓の提供を受け入れる確率は、移植候補者が白人の場合と比較して黒人で低く、男性に比べ女性で高いことが、米国・インディアナ大学のKhadijah Breathett氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年3月25日号に掲載された。
人種、性別と受諾の関連を評価する米国のコホート研究
研究グループは、移植待機リストに登録されている心臓移植候補者の人種および性別が、移植施設の医療チームが心臓提供の申し出を受諾する確率と関連するかを評価する目的で、コホート研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。
全米臓器分配ネットワーク(UNOS)のデータセットを用いて、2018年10月18日~2023年3月31日に心臓移植の候補となった米国の非ヒスパニック系黒人と非ヒスパニック系白人の成人について、心臓提供の申し出を受諾したか否かを特定した。
主要アウトカムは、移植施設の医療チームによる、心臓提供の申し出の受諾とした。
受諾の割合、候補者が黒人男性では白人女性の半分以下
心臓移植の候補者1万4,890例を解析の対象とした。30.9%が黒人、69.1%が白人、73.6%が男性、26.4%が女性であった。1万3,760例の心臓提供者による15万9,177件の申し出があった。移植候補者の72.5%が、心臓提供の申し出を受け入れた。
心臓提供者による初回の申し出を移植施設の医療チームが受諾した割合は、移植候補者が白人女性の場合で17.5%と最も高く、次いで黒人女性14.0%、白人男性10.3%であり、黒人男性の場合は7.9%と白人女性の半分に満たなかった(p<0.001)。
公平な心臓提供受け入れ戦略の確立に向けて
移植候補者が黒人の場合、医療チームによる受諾のオッズ(OR)は、初回の申し出では白人の移植候補者よりも低く(OR:0.76、95%信頼区間[CI]:0.69~0.84)、16回目の申し出までは白人の移植候補者より有意に低いままであり、17回目以降に有意差がなくなった。
移植候補者が女性の場合、受諾のORは、初回の申し出では男性の移植候補者よりも高く(OR:1.53、95%CI:1.39~1.68)、6回目の申し出までは有意に高い状態が続いたが、10~31回目までは有意に低くなり、それ以降は有意差が消失した。
著者は、「このような人種、性別による受け入れ状況の不均衡は、移植候補者、心臓提供者、申し出のレベルの変数で補正した後も持続しており、意思決定の過程における人種および性別に関する偏見の存在が示唆される」と述べ、「施設レベルでの意思決定について、さらに調査を行うことで、公平な心臓提供受け入れの戦略が明らかになる可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)