米国・シカゴ大学のKevin C. Zhang氏らは、米国の心臓移植候補者約1万7,000例を対象としたレジストリベースの研究を行い、医学的緊急性に基づく心臓移植候補者の順位付けの連続多変数割り当てスコアモデルを開発した。現行の6段階システムに比べ、心臓分配の医学的緊急性の要素に関して、より有用である可能性があるという。米国の心臓分配システムは、移植をしなければ死亡するリスクが高い医学的緊急性がある候補者を優先しているが、現行の治療ベースの6段階システムは操作がされやすく、順位付けに限界があるとされている。JAMA誌2024年2月13日号掲載の報告。
事前定義の予測因子セット+仏モデルで開発
研究グループは、2019年1月1日~2022年12月31日に米国心臓分配システムに登録された18歳以上の心臓移植候補者を対象に、レジストリベースの観察試験を行い、医学的緊急性の指標となる新たな米国候補者リスクスコア(US-CRS)モデルを開発した。開発のトレーニング用に97施設(70%)、検証用に41施設(30%)を無作為に割り当てた。
US-CRSモデルは、事前定義した予測因子セットを、現行のフランス候補者リスクスコア(French-CRS)モデルに追加して開発した。感度分析では、短期の機械的循環補助(MCS)に大動脈内バルーンポンプ(IABP)、経皮的心室補助装置(VAD)の使用も含めた。
US-CRSモデル、French-CRSモデル、現行の6段階モデルを、テストデータセットを用いて評価。モデルの予測能は、6週間以内の移植なしの死亡に関する時間依存型ROC曲線下面積(AUC)、全生存一致度(C統計量)で評価した。
登録6週間以内の死亡、総C統計量ともに予測能改善
総計1万6,905例の成人心臓移植候補者が対象となった(平均年齢53歳[SD 13]、男性73%、白人58%)。移植を受けずに死亡した患者は796例(4.7%)だった。
最終的なUS-CRSには、短期のMCS(VA-ECMOまたはtemporary VAD)や、ビリルビンの対数値、推算糸球体濾過量(eGFR)、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の対数値、アルブミン値、ナトリウム値、植込み型補助人工心臓(LVAD)の情報を盛り込んだ。
テスト用データセットでは、登録後6週間以内の死亡に関するAUCは、US-CRSモデル0.79(95%信頼区間[CI]:0.75~0.83)、French-CRSモデル0.72(0.67~0.76)、現行の6段階モデル0.68(0.62~0.73)だった。
総C統計量は、US-CRSモデル0.76(95%CI:0.73~0.80)、French-CRSモデル0.69(0.65~0.73)、現行6段階モデル0.67(同:0.63~0.71)だった。
IABPと経皮的VADを短期のMCSとして分類すると、効果量は54%減少した。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)