術前または術後補助化学療法歴のない早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、乳がん組織中の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)量が高値ほど、有意に生存率が良好であることを、米国・メイヨー・クリニックのRoberto A. Leon-Ferre氏らが後ろ向きプール解析で明らかにした。乳がん組織中のTIL量と早期TNBC患者のがん再発および死亡との関連は不明であった。著者は、「今回の結果は、乳がん組織中のTIL量が早期TNBC患者の予後因子であることを示すものである」とまとめている。JAMA誌2024年4月2日号掲載の報告。
術前・術後化学療法未実施TNBC患者1,966例の検体で、TIL量と予後の関連を解析
研究グループは、北米(米国・ミネソタ州ロチェスター、カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバー)、欧州(フランス・パリ、リヨン、ビルジュイフ、オランダ・アムステルダム、ロッテルダム、イタリア・ミラノ、パドバ、ジェノバ、スウェーデン・ヨーテボリ)、アジア(日本・東京、韓国・ソウル)の13施設において、1979~2017年にTNBCと診断され、外科手術を受けたが術前または術後補助化学療法を受けなかった(放射線療法の有無は問わない)早期TNBC患者を対象に、切除された乳房の原発腫瘍組織中のTIL量と予後との関連について、個々の患者のデータを後ろ向きにプール解析した(最終追跡調査日は2021年9月27日)。
主要評価項目は無浸潤疾患生存期間(iDFS)、副次評価項目は無再発生存期間(RFS)、無遠隔再発生存期間(DRFS)、および全生存期間(OS)とし、施設で層別化した多変量Coxモデルを用いて関連性を評価した。
合計2,211例のデータが得られ、このうち適格基準を満たした1,966例を解析に組み込んだ。
TIL量が多いほど、iDFS率、RFS率、DRFS率、OS率が改善
1,966例の患者背景は、年齢中央値56歳(四分位範囲[IQR]:39~71)、StageIが55%、TIL量(間質専有面積比率)の中央値は15%(IQR:5~40)であった。1,966例中417例(21%)がTIL量50%以上(年齢中央値41歳[IQR:36~63])、1,300例(66%)が30%未満(59歳[41~72])であった。追跡期間中央値は18年(95%信頼区間[CI]:15~20)であった。
全体において、各アウトカムに関するイベント数は、iDFSが1,074例(55%)、RFSが940例(48%)、DRFSが832例(42%)、OS(死亡)は803例(41%)であった。
StageIのTNBCにおいて、5年DRFS率は、TIL量が50%以上の患者では94%(95%CI:91~96)、30%未満の患者では78%(75~80)、5年OS率はそれぞれ95%(92~97)、82%(79~84)であった。
追跡期間中央値18年時点で、年齢、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、組織学的悪性度および放射線治療歴を補正後、TIL量が10%増加するごとに、iDFSイベントリスクは8%(ハザード比[HR]:0.92、95%CI:0.89~0.94)、RFSイベントリスクは10%(0.90、0.87~0.92)、DRFSイベントリスクは13%(0.87、0.84~0.90)、死亡リスクは12%(0.88、0.85~0.91)それぞれ低下し、TIL量の増加とiDFS、RFS、DRFSおよびOSの改善との関連が認められた(尤度比検定のp<10
-6)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)