デュピルマブ追加で、COPDの増悪が減少、肺機能改善/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/06/03

 

 血中好酸球数の増加に基づく2型炎症を呈する慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の治療において、標準治療へのヒト型抗ヒトインターロイキン(IL)-4/13受容体モノクローナル抗体デュピルマブの上乗せはプラセボと比較して、COPD増悪の年間発生率を有意に減少させ、肺機能の改善をもたらすことが、米国・アラバマ大学バーミンガム校のSurya P. Bhatt氏らNOTUS Study Investigatorsが実施した「NOTUS試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月20日号に掲載された。

29ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験

 NOTUS試験は、29ヵ国329施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年7月~2023年5月に参加者の無作為化を行った(サノフィとリジェネロン・ファーマシューティカルズの助成を受けた)。

 年齢40~85歳、10pack-years以上の喫煙歴のある現または元喫煙者で、2型炎症(血中好酸球数300/μL以上)を呈する中等症または重症のCOPD患者935例を登録し、デュピルマブ300mgを2週ごとに皮下投与する群に470例、プラセボ群に465例を無作為に割り付けた。全例が基礎治療として標準的な吸入薬の投与を受けた。

 全体の平均(±SD)年齢は65.0(±8.3)歳、67.6%が男性で、29.5%が現喫煙者、98.8%が3種の吸入薬(糖質コルチコイド+長時間作用型抗コリン薬[LAMA]+長時間作用型β2刺激薬[LABA])による基礎治療を受けていた。ベースラインの血中好酸球数の平均値は407±336/μLだった。

12週、52週までの1秒量も良好、SGRQスコアには差がない

 52週の試験期間におけるCOPDの中等度または重度増悪の年間発生率(主要エンドポイント)は、プラセボ群が1.30(95%信頼区間[CI]:1.05~1.60)であったのに対し、デュピルマブ群は0.86(0.70~1.06)であり、プラセボ群に対する率比は0.66(95%CI:0.54~0.82)とデュピルマブ群で有意に優れた(p<0.001)。

 気管支拡張薬吸入前の1秒量(FEV1)のベースラインから12週までの最小二乗平均変化量は、プラセボ群が0.057L(95%CI:0.023~0.091)増加したのに対し、デュピルマブ群は0.139L(0.105~0.173)の増加であり、両群の最小二乗平均差は0.082L(95%CI:0.040~0.124)とデュピルマブ群で有意に良好であった(p<0.001)。52週までの変化量も、デュピルマブ群で有意に優れた(最小二乗平均差:0.062L、95%CI:0.011~0.113、p=0.02)。

 一方、ベースラインから52週までのSt. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコア(0~100点、点数が低いほどQOLが良好)の変化には、両群間に有意な差を認めなかった。

安全性プロファイルは確立されたものと一致

 有害事象の発現率は両群で同程度であり(デュピルマブ群66.7%、プラセボ群65.9%)、デュピルマブの安全性プロファイルは確立されたものと一致していた。最も頻度の高かった有害事象は、新型コロナウイルス感染症(9.4% vs.8.2%)、鼻咽頭炎(6.2% vs.5.2%)、頭痛(7.5% vs.6.5%)、COPD(4.9% vs.7.8%)であった。重篤な有害事象は、それぞれ13.0%および15.9%、死亡の原因となった有害事象は2.6%および1.5%で認めた。

 著者は、「これらの結果は、COPD患者のサブグループの病理生物学的な疾患メカニズムにおける2型炎症の役割と、この別個のCOPDエンドタイプの治療におけるデュピルマブの役割をさらに強固なものにする」と述べ、「本試験と先行研究であるBOREAS試験の知見を統合すると、COPDの治療における、2型炎症の促進因子としてのIL-4とIL-13を標的とすることの重要性が浮き彫りとなった」としている。

(医学ライター 菅野 守)