お知らせがあります
スパイロメトリー正常の喫煙者、症状有無で呼吸器機能の経過に違いは?/JAMA

症候性のタバコ曝露あり・スパイロメトリー正常(tobacco exposure and preserved spirometry:TEPS)者は、無症候性TEPS者と比べて、FEV1低下速度や、慢性閉塞性肺疾患(COPD)発生率に有意差はみられないことが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のWilliam McKleroy氏らによる多施設共同長期観察試験「SPIROMICS II試験」で示された。一方で、症候性TEPS者は追跡期間中央値5.8年の間に、呼吸器症状が増悪した被験者が有意に多かったという。喫煙者はスパイロメトリー正常でも呼吸器症状を有することがあるが、これらの人々は通常、COPD治験では除外され、エビデンスベースの治療が欠落している。研究グループは、無症候性TEPSと症候性TEPSの自然経過を明らかにする検討を行った。JAMA誌2023年8月1日号掲載の報告。
FEV1低下速度、COPD発症率、呼吸器増悪の頻度などを比較
SPIROMICS II試験はSPIROMICS I試験の拡張版で、COPDの有無を問わず40~80歳の喫煙者(20pack-years超)と、その対照群としてタバコ曝露や気流制限のない人を対象とした。被験者はSPIROMICS I・II試験に2010年11月10日~2015年7月31日に登録され、2021年7月31日まで追跡を受けた。SPIROMICS I試験の被験者は3~4年間、毎年の受診時に、スパイロメトリー、6分間歩行テスト、呼吸器症状の評価、胸部CTを受けた。SPIROMICS II試験の参加者は、SPIROMICS I試験登録後5~7年に、追加で1回の対面受診を受けた。呼吸器症状はCOPDアセスメントテスト(スコア範囲:0~40、高スコアほど重度)で評価した。
症候性TEPS患者は、スパイロメトリー正常(気管支拡張後のFEV1と努力肺活量の比が>0.70)で、COPDアセスメントテストのスコアは10以上だった。無症候性TEPS患者は、スパイロメトリー正常でCOPDアセスメントテストのスコアは10未満だった。呼吸器症状とその増悪に関する自己報告は、4ヵ月ごとに電話で評価した。
主要アウトカムは、症候性TEPS患者の、無症候性TEPSと比較したFEV1の加速度的低下だった。副次アウトカムは、スパイロメトリーで定義したCOPDの発症、呼吸器症状、呼吸器増悪の頻度、CTに基づく気道壁肥厚や肺気腫の進行などだった。
COPD累積発生率、両群ともに32~33%と同等
被験者数は1,397例で、うち226例が症候性TEPS(平均年齢60.1[SD 9.8]歳、女性59%)、269例が無症候性TEPS(63.1[9.1]歳、50%)だった。追跡期間中央値5.76年時点で、症候性TEPS群のFEV1低下は-31.3mL/年、無症候性TEPS群は-38.8 mL/年だった(群間差:-7.5 mL/年、95%信頼区間[CI]:-16.6~1.6mL/年)。
COPD累積発生率は、症候性TEPS群33.0%、無症候性TEPS群31.6%だった(ハザード比[HR]:1.05、95%CI:0.76~1.46)。症候性TEPS群は無症候性TEPS群に比べ、呼吸器症状増悪の頻度は有意に高率だった(それぞれ、0.23件/人・年、0.08件/人・年、率比:2.38、95%CI:1.71~3.31、p<0.001)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)
関連記事

有病率8.6%。中国のCOPD有病率とリスク因子/Lancet
ジャーナル四天王(2018/04/24)

COPDの基準を満たさない喫煙者は健康なのか?(解説:倉原 優 氏)-536
CLEAR!ジャーナル四天王(2016/05/30)

喫煙歴+呼吸器症状は呼吸機能悪化のリスク/NEJM
ジャーナル四天王(2016/05/26)
[ 最新ニュース ]

家庭内空気汚染の疾病負担、1990~2021年の状況は?/Lancet(2025/03/28)

局所進行上咽頭がん、化学放射線療法後のcamrelizumabが有効/JAMA(2025/03/28)

SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬は女性と高齢者に対しても有効か?(解説:住谷哲氏)(2025/03/28)

CKDの貧血治療、ダプロデュスタットvs.ダルベポエチン アルファ~メタ解析(2025/03/28)

化学療法誘発性末梢神経障害の克服に向けた包括的マネジメントの最前線/日本臨床腫瘍学会(2025/03/28)

Lp(a)測定の国際標準化、新薬登場までに解決か/日本動脈硬化学会(2025/03/28)

不妊治療中、男性はコーヒーの飲み過ぎに注意(2025/03/28)

新型コロナ入院患者、退院後も2年以上にわたり死亡リスクは高い(2025/03/28)

各非定型抗精神病薬の抗精神病薬関連便秘リスク〜米国FDA有害事象報告(2025/03/28)
[ あわせて読みたい ]
エキスパートが教える痛み診療のコツ(2018/10/11)
医療者向け『学校がん教育.com』(2022/12/01)
アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11)
アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11)
診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第43回(2022/10/17)
今考える肺がん治療(2022/08/24)
あなたにとって、開業の「成功」「失敗」とは?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第42回(2022/08/09)
「後継者採用」という甘い誘いに乗ったら…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第41回(2022/07/08)
「診療所、知人に売るから大丈夫」、それ本当に大丈夫??【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第40回(2022/06/06)
Dr.金井のCTクイズ 初級編(2022/05/17)
専門家はこう見る
喫煙者/喫煙既往歴者でスパイロメトリー測定値がCOPD基準を満たさないTEPS群の中で呼吸器症状有群(FEV1/FVC<0.7かつCAT≧10)は臨床の視点からCOPD重症化予備群として対応すべき?―(解説:島田俊夫氏)
コメンテーター : 島田 俊夫( しまだ としお ) 氏
地方独立行政法人静岡県立病院機構 静岡県立総合病院 リサーチサポートセンター センター長
J-CLEAR評議員