軽症~中等症の非心原性脳梗塞または一過性脳虚血発作の急性期患者の治療において、プラセボと比較して抗炎症薬コルヒチンの低用量投与は、90日以内の脳卒中再発リスクを減少させず、重篤な有害事象の発生にも差はないことが、中国・首都医科大学のJiejie Li氏らCHANCE-3 Investigatorsが実施した「CHANCE-3試験」で示された。研究の詳細は、BMJ誌2024年6月26日号に掲載された。
中国の多施設共同無作為化プラセボ対照試験
CHANCE-3試験は、中国の244の病院で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照試験であり、2022年8月~2023年4月の期間に患者を登録した(中国国家重点研究開発計画などの助成を受けた)。
年齢40歳以上、軽症~中等症の脳梗塞または一過性脳虚血発作と診断され、高感度C反応性蛋白(CRP)濃度≧2mg/Lの患者8,343例(脳梗塞7,411例[88.8%]、一過性脳虚血発作932例[11.2%])を登録した。
これらの患者を、標準的な基礎治療に加え、症状発現から24時間以内にコルヒチンを投与する群に4,176例、プラセボ群に4,167例を無作為に割り付けた。コルヒチンは、1~3日目に0.5mgを1日2回投与し、それ以降は0.5mgを1日1回投与した。
有効性の主要アウトカムは無作為化から90日以内の新規脳卒中(脳梗塞、出血性脳卒中)、安全性の主要アウトカムは投与期間中の重篤な有害事象とし、ITT解析を行った。
血管イベント、修正Rankin尺度>1にも差はない
ベースラインの全体の年齢中央値は66.3歳、37.6%が女性であった。高感度CRPの中央値は4.8mg/L、症状発現から無作為化までの時間中央値は14.6時間だった。
90日以内に新たに脳梗塞または出血性脳卒中を発症した患者は、コルヒチン群が264例(6.3%)、プラセボ群は270例(6.5%)と、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.83~1.16、p=0.79)。
また、90日の時点での血管イベント(脳卒中、一過性脳虚血発作、心筋梗塞、血管死の複合)(コルヒチン群7.1% vs.プラセボ群7.4%、HR:0.96[95%CI:0.82~1.13]、p=0.64)、脳梗塞(6.2% vs.6.3%、0.98[0.82~1.16]、p=0.79)、脳卒中または一過性脳虚血発作(6.8% vs.7.0%、0.98[0.83~1.15]、p=0.79)、修正Rankin尺度>1の患者(10.4% vs.10.6%、オッズ比:0.99[0.86~1.14]、p=0.86)にも、両群間に有意差はなかった。
下痢、腹部膨満、肝機能異常が有意に多い
重篤な有害事象は、コルヒチン群で91例(2.2%)、プラセボ群で88例(2.1%)にみられた(p=0.83)。このうち、死亡(コルヒチン群0.8% vs.プラセボ群1.1%、p=0.21)、心血管死(0.5% vs.0.7%、p=0.23)、非心血管死(0.4% vs.0.4%、p=0.60)、消化器イベント(0.2% vs.0.2%、p=0.80)にも差を認めなかった。
有害事象は、コルヒチン群で910例(21.8%)、プラセボ群で888例(21.3%)に発現した。下痢(1.7% vs.0.7%、p<0.001)、腹部膨満(0.5% vs.0.2%、p=0.05)、肝機能異常(ALTまたはASTが正常上限値の3倍以上)(0.3% vs.0.1%、p=0.03)が、コルヒチン群で有意に多かった。
著者は、「先行研究と一致して、下痢、腹部膨満、肝機能異常の発生に差がみられたが、本試験では投与期間が短かったこともあり、全体的な発生率は低かった」と述べるとともに、「これらの知見は、アジア人患者以外の集団には一般化できない可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)