アジア系医学生に落ちこぼれが多い理由

提供元:ケアネット

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公開日:2008/09/26

 

イギリスの医学生のうち約30%の出自は民族・人種的に白人以外の少数派で、彼ら少数派の医学生および医師に対する評価は、白人出自の者と比較して平均以下である。類似の報告はアメリカ、オーストラリアでも報告され、アメリカでは民族・人種的な「ステレオタイプの脅威」によるものと説明されている。この理論を当てはめることでイギリスにおいても、民族的に少数派の落ちこぼれ医学生の背景にある民族的なステレオタイプを調査する質的研究が、ロンドンの医学教育アカデミックセンターのKatherine Woolf氏らによって行われた。BMJ誌2008年8月18日号より。

医学生とクリニカルティーチャーの意識を分析




本研究は個人面談とフォーカスグループ(白人、インド人、パキスタン/バングラデシュ人)をデザインし分析した質的研究。分析対象は、ロンドンのメディカルスクールに籍を置く医学生(3年課程のmedical students、1年時に臨床講義)27人と、クリニカルティーチャー25人で、民族性と性別を考慮し選定された。収集されたデータは、ステレオタイプ脅威の理論(教育でネガティブな固定観念を抱かせることになっている心理現象)と不変な比較研究法を用いて分析された。

「典型的なアジア系医学生」は本と向き合ってばかりいておとなしい




参加者はいずれも、医学生とクリニカルティーチャーとの関係性が、臨床学習では重要であることを認識していた。

その上で、クリニカルティーチャーは、「インタラクティブ」「熱心」「礼儀正しい」学生を「よい学生」と強く認識していた。何人かは、「おとなしい」「動機に乏しい」「無気力」な学生に対して攻撃的になると回答した。

医学生は、「心強い」「面白い」「インタラクティブ」「攻撃的ではない」教師を「よい教師」であると強く認識していた。

医学生とクリニカルティーチャーとは「典型的なアジア系医学生」の認識について一致しており、その医学生像ははっきりしていた。すなわち「本に過度に依存」「患者とのコミュニケーションが不得手」「臨床講義ではとてもおとなしい」「親のエゴが優先して医学の道に進んでいるため動機に乏しい」という見方である。

「典型的な白人医学生」像は、「自律的」「自信に満ちている」「外向的なチームプレーヤー」であったが、完全にはステレオタイプ化されてはいなかった。

Woolf氏は、「アジア系臨床学生は白人学生よりも、ステレオタイプ的に、かつ否定的に捉えられているようである。それがクリニカルティーチャーとの関係性を危うくし学習機会を減らすことになっているようだ」とし、「なかでもわずかなネガティブなステレオタイプの存在が、『ステレオタイプの脅威』となって少数派の学生の能力が劣っていると助長している可能性がある」と述べ、「クリニカルティーチャーは、個々人をよく知る機会と、ポジティブな教育的関係を促進する訓練を受けることが推奨される」とまとめている。