症候性心房細動に対する肺静脈隔離術(PVI)はシャム(偽手技)との比較において、6ヵ月時の心房細動負荷が統計学的に有意に減少し、症状と生活の質は大幅に改善した。英国・Eastbourne District General HospitalのRajdip Dulai氏らが、無作為化二重盲検比較試験「SHAM-PVI試験」の結果を報告した。心房細動の治療において、PVIには大きなプラセボ効果があるかもしれないとの懸念があるが、これまで無作為化二重盲検比較試験は実施されていなかった。JAMA誌オンライン版2024年9月2日号掲載の報告。
埋込み型ループレコーダーで心房細動負荷を評価
研究グループは、2020年1月~2024年3月に英国の3次医療機関2施設で、クラスIまたはIIIの抗不整脈薬(β遮断薬を含む)による治療にもかかわらず症候性の発作性または持続性心房細動を有し、カテーテルアブレーションのため紹介された患者を登録し、クライオバルーンカテーテルを用いたPVI群または横隔神経ペーシングのみのシャム群に無作為に割り付けた。
主な除外基準は、長期(1年以上)にわたる持続性心房細動、左心房アブレーションまたは外科的アブレーション既往の患者、アブレーションを必要とするその他の不整脈を有する患者、左房径5.5cm以上、駆出率35%未満の患者などであった。
登録時に未装着の患者全例に埋込み型ループレコーダーが装着され、主要手技の2週間以上前には装着が完了し、心房細動負荷(心房細動累積時間)が評価された。
主要エンドポイントは、最初の3ヵ月間(ブランキング期間)を除く6ヵ月時の心房細動負荷(3ヵ月時~6ヵ月時の心房細動累積時間)であった。副次エンドポイントには、心房細動の症状やQOL(Atrial Fibrillation Effect on Quality of Life[AFEQT]質問票、Mayo AF-Specific Symptom Inventory[MAFSI]、European Heart Rhythm Association[EHRA]スコア、SF-36)、イベント発生までの時間、安全性などが含まれた。
心房細動負荷、プラセボと比較してPVIで有意に減少
2020年1月~2023年8月に(2020年3月~2021年7月はCOVID-19のため一時中断)、126例が無作為化され(平均年齢66.8歳、男性89例[70.63%]、発作性心房細動20.63%)、123例が主要評価の解析対象集団となった。
6ヵ月時の心房細動負荷はベースラインからの絶対平均変化量としてPVI群で60.31%、シャム群で35.0%低下した(幾何平均群間差:0.25、95%信頼区間[CI]:0.15~0.42、p<0.001)。
6ヵ月時のAFEQT要約スコア(範囲:0~100、高スコアほど心房細動関連障害が軽度)の推定群間差は、PVI群が18.39ポイント(95%CI:11.48~25.30)高かった。MAFSIの頻度スコアおよび重症度スコアについても、PVI群が良好であった。また、SF-36で評価した健康関連QOLはPVIによる改善が示され、6ヵ月時の推定群間差は9.27ポイント(95%CI:3.78~14.76)とPVI群が良好であった。
なお、著者は研究の限界として、試験期間が6ヵ月と短かったこと、PVIに限定されていたこと、2施設のみの実施であったことなどを挙げている。
(ケアネット)