集中治療室(ICU)に入室した成人重症患者では、通常ケアと比較して、専門医資格を持つ集中治療医が主導し現地の集学的医療チームと行う遠隔医療による毎日の集学的回診は、ICU入室期間(ICU LOS)を短縮せず、患者レベルおよびICUレベルのアウトカムにも改善を認めないことが、ブラジル・Hospital Israelita Albert EinsteinのAdriano J. Pereira氏らが実施した「TELESCOPE試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年10月9日号で報告された。
ブラジルのICUのクラスター無作為化試験
TELESCOPE試験は、ICUにおける遠隔医療が重症患者の臨床アウトカムを改善するか評価することを目的とする非盲検クラスター無作為化対照比較試験であり、2019年6月~2021年4月の期間にブラジルの30ヵ所のICUで患者を登録した(ブラジル保健省などと提携した)。
専門医資格を有する集中治療医の主導による毎日の集学的回診が日常的に行われていない30ヵ所のICUを、月~金曜日に集中治療医が主導し現地の集学的医療チームと行う遠隔医療により集学的回診を行う群(遠隔ICU群、15施設)、または通常ケアを行う群(通常ケア群、15施設)に無作為に割り付けた。遠隔ICU群では、集中治療医主導の集学的遠隔回診のほか、ICUの能力に関する指標について議論するための月1回の監査とフィードバック会議を開催し、エビデンスに基づく臨床プロトコールが提供された。
司法関連の問題がある患者を除き、参加ICUに入室したすべての成人(年齢18歳以上)患者を対象とした。
主要アウトカムは、患者レベルでのICU LOS(ICU入室から退室[他の介護施設または病院への転院]またはICUでの死亡までの期間)とした。
サブグループ解析でも差はない
1万7,024例(ベースライン期間1,794例[遠隔ICU群909例、通常ケア群885例]、介入期間1万5,230例[7,471例、7,759例])を登録した。全体の平均年齢は61(SD 18)歳、44.7%が女性で、SOFA(Sequential Organ Failure Assessment)スコア中央値は6点(四分位範囲:2~9)であり、45.5%が入室時に侵襲的機械換気を受けていた。
ベースライン評価で補正した平均ICU LOSは、遠隔ICU群が8.1(SD 10.0)日、通常ケア群は7.1(9.0)日と、両群間に有意な差を認めなかった(変化率:8.2%[95%信頼区間[CI]:-5.4~23.8]、群間差中央値:0日[-2~3]、p=0.24)。
感度分析および事前に規定されたサブグループにおいても、統計学的な有意差はみられなかった。
副次アウトカムにも差はない
8項目の患者レベルの副次アウトカムにも両群間に有意差はなく、たとえば院内死亡率は遠隔ICU群が41.6%、通常ケア群は40.2%であった(オッズ比:0.93、95%CI:0.78~1.12)。また、ICUレベルの副次アウトカムにも差はなかった。
著者は、「遠隔医療の恩恵を受けるICUとはどのようなものかを含め、ICU患者のアウトカムを改善するための遠隔医療提供の最良のモデルは、いまだに定義されていない」としている。
(医学ライター 菅野 守)