更年期のホルモン補充療法、心血管疾患のリスクは?/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/23

 

 経口エストロゲン・プロゲスチン療法は、虚血性心疾患および静脈血栓塞栓症のリスク増加と関連していた。一方、合成ホルモン剤tiboloneは、虚血性心疾患、脳梗塞、心筋梗塞のリスク増加と関連していたが、静脈血栓塞栓症とは関連していなかった。スウェーデン・ウプサラ大学のTherese Johansson氏らが、スウェーデン統計局、ならびに保健福祉庁の処方薬登録、全国患者登録、がん登録および死因登録のデータを用いて行った、無作為化比較試験(RCT)を模倣するtarget trialの結果を報告した。閉経後10年以上経過後または60歳を超えてからの経口エストロゲン・プロゲスチン療法開始は、心疾患、脳卒中、静脈血栓塞栓症のリスクが増加する可能性が示唆されているが、現行更年期ホルモン補充療法の心血管疾患リスクに関する研究は不足していた。BMJ誌2024年11月27日号掲載の報告。

スウェーデンの50~58歳の女性約92万例を解析

 研究グループは、2007年7月~2018年12月の間に毎月、対象を登録して追跡を開始し、138のネステッド試験がデザインされた。

 対象は、追跡開始前に過去2年間ホルモン補充療法を行っておらず、心血管疾患やがんならびに子宮摘出術または両側卵巣摘出術の既往歴がない50~58歳の女性で、追跡開始時の処方薬の種類により8つの群(持続的経口併用療法、逐次的経口併用療法、経口エストロゲン単独療法、経口エストロゲン+レボノルゲストレル放出子宮内システム併用、tibolone、経皮併用療法、経皮エストロゲン単独療法、ホルモン補充療法を開始せず)のいずれかに分類し、主要エンドポイントの発生、死亡、転居または2年間のいずれか早い時点まで追跡した。

 主要エンドポイントは、静脈血栓塞栓症、虚血性心疾患、脳梗塞、心筋梗塞であった。それぞれ個別または複合のアウトカムとして解析し、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推算した。

 解析対象は、138試験において少なくとも1試験で適格基準を満たした91万9,614例で、このうちホルモン補充療法を開始した女性が7万7,512例、開始しなかった女性が84万2,102例であった。

持続的経口併用療法は、虚血性心疾患および静脈血栓塞栓症のリスクが増加

 追跡期間中(2年間)に、主要エンドポイントのイベントは2万4,089例に発生した。1万360例(43.0%)で虚血性心疾患、4,098例(17.0%)で脳梗塞、4,312例(17.9%)で心筋梗塞、9,196例(38.2%)で静脈血栓塞栓症が発生していた。

 ITT解析の結果、tiboloneは、ホルモン補充療法を開始しなかった女性と比較して虚血性心疾患のリスク増加と関連していた(HR:1.52、95%CI:1.11~2.08)。また、tibolone(HR:1.46、95%CI:1.00~2.14)、ならびに持続的経口併用療法(1.21、1.00~1.46)は、虚血性心疾患のリスクが高かった。

 持続的経口併用療法(HR:1.61、95%CI:1.35~1.92)、逐次的経口併用療法(2.00、1.61~2.49)、および経口エストロゲン単独療法(1.57、1.02~2.44)は、静脈血栓塞栓症のリスクが高かった。

 追加のper protocol解析では、tiboloneは脳梗塞(HR:1.97、95%CI:1.02~3.78)および心筋梗塞(1.94、1.01~3.73)のリスク増加と関連していることが示された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 名郷 直樹( なごう なおき ) 氏

武蔵国分寺公園クリニック 名誉院長

J-CLEAR理事