貧血を伴う動脈瘤性くも膜下出血の輸血、非制限戦略vs.制限戦略/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/24

 

 動脈瘤性くも膜下出血で貧血を伴う患者において、非制限輸血戦略は制限輸血戦略と比較して12ヵ月後の神経学的アウトカム不良のリスクを改善しなかった。カナダ・オタワ大学のShane W. English氏らが、カナダ、オーストラリアおよび米国の計23施設で実施した研究者主導の無作為化非盲検評価者盲検試験「Subarachnoid Hemorrhage Red Cell Transfusion Strategies and Outcome:SAHARA試験」の結果を報告した。動脈瘤性くも膜下出血後の集中治療管理中の患者において、制限輸血戦略と比較した非制限輸血戦略の有効性は不明であった。NEJM誌オンライン版2024年12月9日号掲載の報告。

非制限群(≦10g/dL)vs.≦制限群(8g/dL)で神経学的アウトカムを比較

 研究グループは、動脈瘤性くも膜下出血を初めて発症し入院後10日以内のヘモグロビン値10g/dL以下の18歳以上の患者を、非制限輸血戦略群(ヘモグロビン値≦10g/dLで輸血)または制限輸血戦略群(ヘモグロビン値≦8g/dLで輸血)に1対1の割合で無作為に割り付けた。

 主要アウトカムは、12ヵ月時の神経学的アウトカム不良とし、修正Rankinスケールスコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])が4以上と定義した。

 また、副次アウトカムは、12ヵ月時の機能的自立度(Functional Independence Measure[FIM]、範囲:18~126)、ならびにEQ-5D-5L効用値(範囲:-0.1~0.95)およびVAS(範囲:0~100)で測定したQOLなどであった。

12ヵ月後の神経学的アウトカム不良、非制限群33.5%、制限群37.7%

 2015年10月17日~2016年11月21日にパイロット試験として60例、2018年3月11日~2023年7月10日に本試験として682例の計742例が無作為化され、このうち同意撤回等を除外した732例(非制限輸血戦略群366例、制限輸血戦略群366例)が解析対象となった。年齢は平均(±SD)59.4±12.3歳で、82%が女性であった。

 12ヵ月時の主要アウトカムは、データが得られなかった7例を除く725例(97.7%)について解析した。神経学的アウトカム不良は、非制限輸血戦略群で364例中122例(33.5%)、制限輸血戦略群で361例中136例(37.7%)に認められた(リスク比:0.88、95%信頼区間[CI]:0.72~1.09、p=0.22)。

 12ヵ月時のFIMスコア(平均値±SD)は非制限輸血戦略群82.8±54.6、制限輸血戦略群79.8±54.5(平均群間差:3.01、95%CI:-5.49~11.51)、EQ-5D-5L効用値(平均値±SD)は両群とも0.5±0.4(平均群間差:0.02、95%CI:-0.04~0.09)、VASスコア(平均値±SD)はそれぞれ52.1±37.5および50±37.1(平均群間差:2.08、95%CI:-3.76~7.93)であった。

 有害事象の発現率は両群間で同程度であった。

(ケアネット)