医師の腺腫検出率改善が大腸がんリスク低下と関連/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2025/01/06

 

 大腸がん検診プログラムで大腸内視鏡検査を受ける参加者において、医師の腺腫検出率(ADR)の改善が大腸がんリスク低下と統計学的に有意に関連することが示された。ただし関連が認められたのは、医師の改善前のADRが26%未満であった場合のみであった。ポーランド・Maria Sklodowska-Curie National Research Institute of OncologyのNastazja D. Pilonis氏らが、大腸がん検診プログラムのデータを用いた観察研究の結果を報告した。ADRの改善が大腸がん発生率の低下と関連しているかどうかは明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2024年12月16日号掲載の報告。

年30件以上大腸内視鏡を実施している医師の検査を受けた参加者について解析

 ポーランドでは2000年以降、ポーランド在住の50~66歳または大腸がんの近親者がいる40~49歳のすべての人を対象に、大腸内視鏡検査による大腸がん検診プログラム(PCSP)が実施されている。

 研究グループは、PCSPにて2000年10月1日~2017年12月31日に大腸内視鏡検査を受けたすべての人を、スクリーニング大腸内視鏡検査日から死亡または追跡期間終了時(2022年12月31日)まで追跡し、PCSPデータベースおよびポーランドのがん登録より大腸がんの診断および死亡に関するデータを取得した。

 また、PCSPにて2000~2017年に大腸内視鏡検査を実施した医師で、年30件以上の内視鏡検査を実施した医師を対象にADRを算出した(各医師について暦年ごとに、腺腫またはがんを検出した大腸内視鏡検査数÷大腸内視鏡検査の総数で算出)。

 主要評価項目は、ADRの改善と大腸内視鏡後の大腸がん発生率との関連であった。Joinpoint回帰分析を用い、大腸内視鏡検査後の大腸がん発生率を、ADRが改善した医師と改善しなかった医師で比較した。ADRは、データセットの六分位に基づき6つのカテゴリー(0~13%、>13~18%、>18~22%、>22~26%、>26~31%、>31~63%)に分類し、少なくとも1段階改善または最高位にとどまった場合をADR改善と定義した。

検査後大腸がん発生率の変化が示されたADRの変曲点は26%

 年30件以上の内視鏡検査を実施した医師は789人、それら医師の内視鏡検査を受け適格基準(最初のスクリーニングで大腸がんと診断されていない、など)を満たした参加者48万5,615人(平均年齢57[SD 5.41]歳、女性が59.6%)が解析対象となった。ベースラインの医師のADRは中央値21.8%(四分位範囲:15.9~28.2)、最高値は63.0%であった。

 追跡期間中央値10.2年において、大腸内視鏡検査後の大腸がんの診断は1,873例、大腸がん関連死亡は474例に発生した。

 Joinpoint回帰分析の結果、大腸がん発生率の変化が示されたADRのjoinpoint(変曲点)は26%であった。ADRが26%の医師の患者の、大腸内視鏡検査後の大腸がん発生率は27.1(95%信頼区間[CI]:20.6~33.7)/10万人年。

 ADRがベースラインでは26%未満で追跡期間中に改善が認められた医師の患者では、大腸内視鏡検査後の大腸がん発生率は31.8(95%CI:29.5~34.3)/10万人年であったのに対し、改善しなかった医師の患者では40.7(37.8~43.8)/10万人年で有意差が認められた(差:8.9/10万人年、95%CI:5.06~12.74、p<0.001)。

 一方、ベースラインのADRが>26%の場合の大腸がん発生率は、追跡期間中に改善が認められた医師の患者で23.4(95%CI:18.4~29.8)/10万人年、改善がみられなかった医師の患者で22.5(18.3~27.6)/10万人年で有意差はみられなかった(差:0.9/10万人年、95%CI:-6.46~8.26、p=0.80)。

(ケアネット)

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コメンテーター : 上村 直実( うえむら なおみ ) 氏

国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長

東京医科大学 消化器内視鏡学講座 兼任教授

J-CLEAR評議員