切除不能な転移のない肝細胞がん(HCC)患者において、肝動脈化学塞栓療法(TACE)とレンバチニブ+ペムブロリズマブの併用療法は、TACE単独療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した。全生存期間(OS)については、OS率の数値的な改善は示されたが、より長期の追跡調査が必要だとしている。近畿大学医学部の工藤 正俊氏らLEAP-012 investigatorsが、33の国または地域から137施設が参加した第III相無作為化二重盲検試験「LEAP-012試験」の初回中間解析の結果を報告した。TACEは切除不能な転移のないHCCの標準治療であるが、TACEとマルチキナーゼ阻害薬の併用を評価した以前の研究では、臨床結果に有意な改善は示されなかった。Lancet誌オンライン版2025年1月8日号掲載の報告。
TACE+レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法vs.TACE+プラセボを比較
LEAP-012試験は、18歳以上、切除不能/転移のないHCCでTACEの適応となる腫瘍を有し、ECOG PSが0または1、Child-Pugh分類Aの患者を対象とした。
研究グループは適格患者を研究施設、α-フェトプロテイン値、ECOG PS、アルブミン-ビリルビン(ALBI)グレードおよび腫瘍量で層別化し、TACE+レンバチニブ(体重60kg以上:12mg、体重60kg未満:8mg、1日1回経口投与)+ペムブロリズマブ(400mgを6週ごとに静脈内投与、最長2年間)群、またはTACE+プラセボ(経口および静脈内投与)群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。
主要評価項目は、RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS(有意水準片側p=0.025)、およびITT集団におけるOS(有意水準片側p=0.0012)とした。安全性は、試験治療を少なくとも1回受けた全患者(as-treated集団)で評価した。
PFS、併用群14.6ヵ月vs.プラセボ群10.0ヵ月
2020年5月22日~2023年1月11日の期間に、847例がスクリーニングされ、そのうち480例(57%)が無作為に割り付けられた(レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用群237例、プラセボ群243例、ITT集団)。
年齢中央値は66歳(四分位範囲[IQR]:58~73)で、女性82例(17%)、男性398例(83%)、白人98例(20%)、アジア人347例(72%)、黒人/アフリカ系米国人4例(1%)、アメリカインディアン/アラスカ先住民5例(1%)であった。
データカットオフ時点(2024年1月30日、追跡期間中央値25.6ヵ月[IQR:19.5~32.4])において、PFS中央値はレンバチニブ+ペムブロリズマブ併用群14.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.6~16.7、イベント数132件[死亡20件、増悪112件])、プラセボ群10.0ヵ月(8.1~12.2、154件[8件、146件])、ハザード比(HR)は0.66(95%CI:0.51~0.84、片側p=0.0002)であった。
データカットオフ時点で、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用群の237例中69例(29%)、プラセボ群の243例中82例(34%)が死亡しており、24ヵ月OS率はレンバチニブ+ペムブロリズマブ併用群75%(95%CI:68~80)、プラセボ群69%(62~74)であった(HR:0.80、95%CI:0.57~1.11、片側p=0.087)。
Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用群で169/237例(71%)、プラセボ群で76/241例(32%)に発現し、主な事象は高血圧(それぞれ57例[24%]、18例[7%])および血小板数減少(27例[11%]、15例[6%])であった。TRAEによる死亡は、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用群で4例(2%)(肝不全、消化管出血、筋炎、免疫性肝炎が各1例)、プラセボ群で1例(<1%)(脳幹出血)が報告された。
(医学ライター 吉尾 幸恵)