新素材PICC、デバイス不具合を改善するか/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2025/01/21

 

 末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)留置のために紹介された患者では、標準的なポリウレタンPICCと比較して新素材の疎水性PICCおよびクロルヘキシジンPICCはいずれも、非感染性または感染性合併症によるデバイス不具合のリスクが低減しなかったことが、オーストラリア・クイーンズランド大学のAmanda J. Ullman氏らが実施した「PICNIC試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2025年1月9日号で報告された。

ブリスベンの3病院で無作為化対照比較優越性試験

 PICNIC試験は、標準的なポリウレタンPICCと比較して、2つの技術革新(疎水性PICC、クロルヘキシジンPICC)を用いると合併症によるデバイスの不具合のリスクが低減するとの仮説の検証を目的とする、実践的な無作為化対照比較優越性試験であり、2019年9月~2022年12月にオーストラリア・ブリスベンの3つの病院(成人施設2、小児施設1)で参加者の適格性の評価を行った(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]の助成を受けた)。

 PICC留置を目的に紹介された成人および小児患者を、疎水性PICC、クロルヘキシジンPICC、標準的なポリウレタンPICCを留置する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付け、8週間追跡した。

 主要アウトカムはデバイス不具合とした。デバイス不具合は、PICCの機能を停止させるか、意図した治療が完了する前に抜去する必要が生じるほど重度な感染性(PICC関連血流感染、局所感染)または非感染性(症候性静脈血栓症[画像で確認]、カテーテルの断裂または破損[肉眼または画像で確認]、カテーテルの閉塞[完全、部分])の合併症の複合と定義した。

デバイス不具合は標準的な素材と差がない

 1,098例を登録した。178例(16.2%)が小児(平均[±SD]年齢12[±3]歳)、920例(83.8%)が成人(57[±15]歳)であった。疎水性PICC群に365例(50.7[±22.3]歳、女性39.5%)、クロルヘキシジンPICC群に365例(50.4[±21.7]歳、40.0%)、標準的ポリウレタンPICC群に368例(49.7[±21.7]歳、40.5%)を割り付けた。患者の53.8%が3つ以上の併存疾患を有し、41.0%が過去に中心静脈カテーテル留置を受けていた。本試験の挿入型PICCは、ほとんどが一般的なダブルルーメンの5.0~5.5Frで、多くは尺側皮静脈に挿入された。

 デバイス不具合は、疎水性群で358例中21例(5.9%)、クロルヘキシジン群で363例中36例(9.9%)、標準的ポリウレタン群で359例中22例(6.1%)に発生した。群間のリスク差は、疎水性PICC群と標準的ポリウレタン群で-0.2%ポイント(95%信頼区間[CI]:-3.7~3.2、p=0.89)、クロルヘキシジン群と標準的ポリウレタン群では3.8%ポイント(-0.1~7.8、p=0.06)と、いずれの比較でも有意な差を認めなかった。

 また、標準的ポリウレタン群との比較におけるデバイス不具合のオッズ比は、疎水性群が0.96(95%CI:0.51~1.78)、クロルヘキシジン群は1.71(0.98~2.99)だった。

合併症は数値上クロルヘキシジン群で多い

 PICC留置期間中のあらゆる原因による合併症は、疎水性群で77例(21.5%)、クロルヘキシジン群で140例(38.6%)、標準的ポリウレタン群で78例(21.7%)に発生した。オッズ比は、疎水性群と標準的ポリウレタン群の比較で0.99(95%CI:0.69~1.42)、クロルヘキシジンと標準的ポリウレタン群で2.35(1.68~3.29)であった。

 あらゆる原因による有害事象は、疎水性群で12例(3.4%)、クロルヘキシジン群で4例(1.1%)、標準的ポリウレタン群で7例(1.9%)に発現した。介入に起因する有害事象は認めなかった。

 著者は、「これらの知見は、多因子によるPICCの機能障害を予防することの複雑さを反映しており、PICCの種類によるデバイス不具合やカテーテル由来血流感染の発生率に明確な差はなかった」「今回の結果はPICC素材に関するこれまでの勧告とは対照的で、これらの勧告の多くは検出力不足または確実なアウトカム評価を欠く観察研究に基づいている」「本研究では、カテーテル閉塞はクロルヘキシジンPICCで頻度が高かったがその原因は不明であり、今後、閉塞の修正可能および修正不可能なリスクのさらなる検討を要する」としている。

(医学ライター 菅野 守)