安定した冠動脈性心疾患患者に対して、待機的な経皮的冠動脈形成術(PCI)を実施する前の、心筋虚血の検出を目的とした運動負荷試験の実施率は、44.5%に留まることが明らかになった。PCI前に同試験を実施することで、より良いアウトカムにつながることはこれまでの研究でも明らかになっており、米国の診療ガイドラインでも推奨している。これは、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のGrace A. Lin氏らが、2万3,887人のメディケア(高齢者向け公的医療保険)加入者について調べたもの。JAMA誌2008年10月15日号にて掲載。
地域格差大きく、PCI数の多い医師ほど実施率低い傾向
調査の結果、PCI実施の前90日以内に運動負荷試験を行っていたのは、1万629人だった。地域別では、少ないところで22.1%、多いところでは70.6%と格差が大きかった。また、担当医の年間のPCI実施数が多いほど、術前の運動負荷試験の実施率は低くなっている。具体的には、年間実施数が60件未満の医師に比べ、実施数が60~94件、95~149件、150件以上の医師の運動負荷試験を実施するオッズ比は、それぞれ、0.91、0.88、0.84だった。
医師の年齢によっても、格差があった。50~69歳の医師は、40歳未満の若い医師に比べ、同試験を実施しない傾向にあり、逆に70歳以上の医師は、40歳未満の医師よりも同試験を実施する傾向が見られた。
人種別では黒人が、また胸痛歴のある人も実施率が高く、オッズ比はそれぞれ1.26と1.28だった。逆に女性や85歳以上、うっ血性心不全歴のある人、心カテーテル法実施歴のある人は実施率が低く、オッズ比はそれぞれ、0.91、0.83、0.85、0.45だった。
実施したPCIの必然性に疑問
Lin氏らはまた、民間保険加入者についてもPCIを行う1年前までの、運動負荷試験の実施率について調べたが、34.4%とさらに低かった。同氏らは、心筋虚血の検出を行わずにPCIを行うことで、PCIの実施が不適切な患者に対しても過剰に行っている可能性があると指摘している。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)