医師のメンタルヘルスに関して、バーンアウト(燃え尽き症候群)や情緒的消耗感予防のためにも早期介入が必要であるとの研究報告は多いが、介入を評価した報告はほとんどなく、あっても追跡期間が短い。Modum Bad Research Institute/オスロ大学(ノルウェー)のKarin E Isaksson Ro氏らは、ストレス下にある医師へのカウンセリング介入後1年間追跡調査を行い、バーンアウトのレベルや変化の現れを調査した。BMJ誌2008年11月15日号(オンライン版2008年11月11日号)より。
ストレス下のノルウェー人医師を1年間追跡調査
この研究は、ノルウェー医師会とModum Bad精神科病院が共同運営する「ノルウェー・リソースセンター」(国内全医師が利用可能。カウンセリングプログラムなどを提供する)を基点に行われた。2003~2005年にかけてカウンセリング介入を受けた医師227例が参加。自己報告形式によるコホート研究が1年間継続された。
介入プログラムは、モチベーションを高めること、自身を取り巻く環境やニードに対する容認を促すことを意図してつくられた「個別カウンセリング1日間」「集団カウンセリング1週間」が用意され、参加者はいずれかを選択できた。
主要評価項目は、バーンアウトのレベル(マスラーク・バーンアウト判定基準による)と、線形回帰分析による情緒的消耗感の因子を予測することとした。
労働時間1.6時間/週減少、病気休暇取得率35%から6%へ
185例(81%、男性88、女性97)が1年間の追跡調査を完了した。介入の結果、情緒的消耗度(スケール1~5)の平均は、3.00(SD 0.94)から2.53(SD 0.76)へと有意に低下した(t=6.76、P<0.001)。この結果は、比較対象として用意した2003年にサンプリングした390例のノルウェー人医師から得られたレベル(1993-1994年から10年追跡による)と同程度だった。
また、1.6時間/週(SD 11.4)の勤務時間の減少が見られた。病気休暇を取得した常勤医の割合は、ベースライン時の35%(63/182)から1年後は6%(10/182)へと、かなりの減少が見られ、並行して精神療法を受けた医師は、20%(36/182)から53%(97/182)へと増加していた。
さらに性、年齢、性格で補正後のコホート全体で、情緒的消耗度の低下が労働時間/週短縮の独立因子であることが(β=0.17、P=0.03)、特に男性医師について介入による「満足感」が情緒的消耗感を軽減する独立予測因子である(β=0.25、P=0.04)ことが明らかになった。
Ro氏は、「短期間のカウンセリング介入で医師のバーンアウトの一面である情緒的消耗感を軽減することが可能なようだ」と結論。情緒的消耗感の軽減が労働時間短縮をもたらすこと、男性医師ではカウンセリングでの「満足感」が鍵になるとまとめている。