冠動脈性心疾患でうつ症状のある人は、心血管イベントのリスクが高いことは知られているが、その原因は、運動不足などのうつ症状に付随する行動的要因にあるようだ。米サンフランシスコVA Medical CenterのMary A. Whooley氏らが、安定冠動脈性心疾患の1,000人超について追跡し、明らかにしたもので、JAMA誌2008年11月26日号で発表した。これまで、うつ症状が心血管イベントリスクを増大することは明らかになっていたが、その要因については不明だった。
1,017人を約5年間追跡
同研究グループは、2000~2008年にかけて、安定冠動脈性心疾患の1,017人について前向き調査を行った。平均追跡期間は4.8年(標準偏差:1.4)。調査開始時点で、うつ症状の評価指標であるPatient Health Questionnaire(PHQ)を用い、症状の有無や程度を評価した。
追跡期間中に発生した心血管イベントは、4,876患者・年中で341件だった。年齢補正後の、うつ症状のある人(PHQスコア10以上、199人)の心血管イベント発症率は10.0%、ない人(818人)は同6.7%だった(ハザード比:1.50、95%信頼区間:1.16~1.95、p=0.002)。また、合併症状や疾患の重症度を補正した後、同ハザード比は1.31(95%信頼区間:1.00~1.71、p=0.04)になった。
運動量などを補正後、うつ症状と心血管イベントリスクの有意な関連性が消失
ところが、心拍数の変動性などといった、生物的要因の補正を行った後、同ハザード比は下がり、p値も0.12と有意差が見られなくなった(ハザード比:1.24、95%信頼区間:0.94~1.63)。
さらに、運動量や喫煙の有無などの行動的要因の補正を行うと、ハザード比はさらに下がり、同じく有意差もなかった(ハザード比:1.05、95%信頼区間:0.79~1.40、p=0.75)。
行動的要因の中でも、運動量の影響が最も大きかった。
同研究グループは、研究対象となった外来の安定冠動脈性心疾患に関して、うつ症状による心血管イベントリスクの増大は、行動的要因、なかでも運動不足によって説明可能だとしている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)