英国での多施設共同無作為化対照試験はこれまで、当初目標としていた参加者を十分に集められたのはわずか3分の1未満に過ぎない。UCL EGA 研究所婦人科オンコロジー部門のUsha Menon氏らの研究グループは、その原因は、試験の管理・運営に十分な注意が払われてこなかったためではないかと考え、20万人以上の女性の参加を得て成功を収めた、過去最大の無作為化試験の1つである英国の卵巣癌スクリーニング共同試験(CTOCS)の要因を探った。BMJ誌2008年11月29日号(オンライン版2008年11月13日号)より。
20万人以上が参加した卵巣癌の大規模スクリーニングの成功要因を分析
CTOCSは、イングランド、ウェールズと北アイルランドにある13のNHS(国民医療保健サービス)センターで、50~74歳の閉経後女性が参加。卵巣悪性腫瘍、両側卵巣摘出、家族性卵巣癌高リスク者、活動性非卵巣悪性腫瘍、他の卵巣癌スクリーニング試験への参加者は除外された。
スクリーニングは13施設と隣接する27の地方保健衛生局で実施され、各病院には専任コーディネーター(上級研究者)が1名おり、スクリーニング計画および日々の検査に立ち会った。
このCTOCSについて、目標動員の達成、勧誘の受理率と動員率の評価を行った。
勧誘の受理率は施設間で大きな開きがあった
勧誘された女性は124万3,282人。そのうち23.2%(28万8,955人)が適格者であり、参加を望むと回答し実際に施設に来たのは予約票を送った人の73.6%(20万5,090人)。
勧誘の受理率は東ロンドンの19%からブリストルの33%まで、施設間で大きな開きがあった。
施設スタッフによるモニタリングと試験プロセスの自動化がカギ
目標動員を確実にするのに重要だったのがコーディネーター(上級研究者)の存在であった。彼らは各施設で恒常的にモニタリング作業をしたため、迅速な検証はもちろん、実際業務で問題が起こっても即座に解決策を提示できた。例えば、各地域の目標不達率に基づいて募集クリニックの規模を決定したり、多数の臨時クリニックを組織化するなどして勧誘数を調整していた。
研究グループは、「彼らの働きのおかげで、CTOCSでは4.3年の間に20万2,638例の無作為割り付けに成功した。プランニングと管理技術は研究設計と同じくらい重要で、上級研究者の配慮が必要としている。募集を成功裏に行うには、献身的で行動的な管理チームによる恒常的なモニタリングが必要であり、地域に見合った募集を達成するためにはセンター固有の解決策を探る決意と、的確な資源の活用が不可欠だ」とも述べている。
さらに、今回用いられたインタラクティブなウェブ・ベースの試験管理システムによるプロセスの集中化と自動化は、多施設共同無作為化対照試験において決定的に重要であり、被験者の募集においては、ビデオによる情報提供とグループ討論を用いることがさらに効果を上げるとも報告している。